ドラマ『推し武道』めいぷる劇中歌：渡辺翔に聞く！いちファンとしてライブが見たい！

◆アニメとアイドルの楽曲の違い◆

——アニメに提供する楽曲と、実際のアイドルに提供する楽曲で制作に違いはありますか。

渡辺　僕は結構違うかもしれないです。アイドルはグループごとで全然違うのですが、アニメはやはり作品ありきなので、作品に合わせます。アニメでもキャラソンだとまた変わってくるし、アーティストが歌う主題歌でも変わりますね。めちゃくちゃいろいろな書き方がありますが、でも全部に言えるのはファンを裏切らないということです。
アニメだと原作ファン、アニメファン、あとは声優さんが歌っている場合は声優さんのファンと、ファンが多岐に渡りますが、アニメに寄りすぎると声優さんのファンを置いていってしまうし、何でこの人が歌うの？　ということにもなりかねないのもあって。もちろん歌っている人にも気に入ってほしいので、アニメは特にすべてに気を配りながら書いていますね。

——アニメのほうが考えることが多そうですね。

渡辺　そうですね。針の穴を通すみたいな。ただ僕はそこに楽しみを感じています。それまでの音楽の流れと、そのアーティストさんの印象が違っても、ちゃんと違う理由がわかるような、正当進化だと感じてもらえるようにやるのも好きです。
実際のアイドルの子たちで、自分がファーストシングルから最新までほぼ全部を書いている子たちがいるのですが、自分がずっとやっているからこそ、その子たちの成長をずっと描いていける。「描く」というのがアイドルでは多いのかなという気がします。その子たちの気持ちを少しでも代弁できたらいいな、ということを考えています。あとは多分どのアーティストもそうですが、「グループ」という時点でずっと続くわけじゃないので、やっていて良かったなって思ってもらえるようにどうしてもしたくて。

——アイドルだと戦略的なこともあったり、時代で変わってきたりすることもありますよね。

渡辺　そうですね。アイドルの文化って独特なので。昨今のどんどん曲が短くなっていく系の文化、１番２番ですっと終わる曲が多いのですが、アイドルだと毎度それはできないなと思うんですよね。たまには１番２番ラスサビと、ちゃんとやってあげないと、ライブ現場のお客さんのカタルシスがしっかり消化できないときがありますよね。音源ベースだとめっちゃ気持ちよくて、「もう1回聞きたい！」となるんですが、ライブだともうちょっとこの曲を入れたかったなということがある。そういうところは意識して違いを出したりしています。
なので今のトレンド感を意識しつつ、とにかくライブのことを考えていますね。リリイベや定期公演など、アイドルは普通のアーティストよりも歌う機会が多いというのも、重要な要素だと思っています。

——アイドルは実際の人がいるわけで、その人をイメージして考えることもできると思いますが、アニメの場合は設定や画の状態で、どのように膨らませていくのでしょう。

渡辺　勝手に自分の中で広げることが多いです。わがままな子ならこういう行動をするし、こういう思考になるよねとか。もしそれが違えば直しが入るので、一旦自分が思うその子の行動範囲を勝手に広げてみます。原作にあることしか書かないのは音楽としては良くないのかなと思っていますが、原作者ではないので難しいですよね。おこがましいとは思いつつ、原作にないストーリーを勝手に作るというか、歌詞に書くときがあります。
ただ、聞いた人が「そうだよね」とか、違和感なく「可愛い」「格好いい」とか、そういう風に思ってもらえるように、性格の先にある一面を出したくなりますね。なので歌詞は、設定を読み込んでも、結局は通常の人間と同じ感覚で書くことが多いかもしれないです。扱う単語でアニメっぽさとかキャラっぽさを出したりしますけれど、何か人物像を深堀りするときは“いる”前提で考えています。

——面白いですね。すごく想像力が必要ですね。実際にアイドルの現場を見ていたり、そういったところも反映されてくるのでしょうか。

渡辺　そうですね。現場を見ていたことが『Clover wish』の歌詞を書くときにはめちゃめちゃ大きかったです。よくTwitterも見ていて、エゴサすると僕が楽曲を手掛けたグループが出てくるんです。曲の感想や、普段考えていることとかもあがっているし、面白い発言もあるんです。
アイドルばかりでなく歌手や声優の界隈に、結構人を惹き付けるオタクファンがいるんですよね。的を射ているということではなく、考えていることが面白い。そういう人のツイートをさかのぼって見ていますね。日々考えていることとか、なぜ仕事を辞めたのかとか、推したいから辞めたんだとか（笑）。くまささんみたいですが。そういう方たちの影響は少なからず受けています。

※「めいぷる・どーる」の「・」はハートです。
（C）平尾アウリ・徳間書店／「推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会・ABC
（C）平尾アウリ･徳間書店／推し武道製作委員会