• 『劇場版 銀河鉄道999』名作を飾るヒロインたちの生き様が呼ぶ感動【日曜アニメ劇場】
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2023.11.10

『劇場版 銀河鉄道999』名作を飾るヒロインたちの生き様が呼ぶ感動【日曜アニメ劇場】

(C)松本零士/零時社・東映アニメーション

11月のBS12トゥエルビ「日曜アニメ劇場」は松本零士の永遠の名作『銀河鉄道999』のアニメ版4作がラインナップ、11月12日には『劇場版 銀河鉄道999』が放送される。
1979年の邦画配給収入1位を記録し大きな社会現象を巻き起こした名作アニメの魅力を、登場する女性キャラたちを通して紹介していこう。
*本稿は映画の結末や具体的な内容に触れている部分があります

身体を機械に変えることで、人間が永遠の命を手にした未来。
少年・星野鉄郎は、謎の美女・メーテルに導かれて銀河鉄道999号で旅に出る。
機械の身体を無償でくれるというアンドロメダへ行き、永遠の命を手にするために。
そして、母を殺した機械伯爵に復讐をするために。
だが、旅の最中で様々な人と出会い、限りある命を精一杯生きることの意味と価値を知った鉄郎は、いつしか「機械の身体をくれる星を破壊してしまいたい」と考えるようになる……。

松本零士作品といえば “男のロマン” というイメージを抱く人も多いだろう。広大な宇宙を舞台にした少年・鉄郎の成長を描くみずみずしい青春ドラマ、そして彼の道標ともなるハーロック、トチロー、アンタレスといった男性キャラたちの生き様は本作の大きな魅力として語られることが多い。
だが、本作に登場する女性キャラクターたちもまた、それに負けない魅力や個性を備えており、そこにはもうひとつの “ロマン” が色濃く反映されているのである。

●鉄郎を成長させる3人の “母” たち●
本作には3人の “母” が登場する。
まずは、鉄郎が土星の衛星・タイタンで出会う大山トチローの母。
山賊に襲われた鉄郎を助けてくれた彼女は、今はどこにいるかもわからない息子の帰りを待ちながら、ひとり静かに暮らしていた。帰ってこないかもしれないと悟りながらも「帰る場所」を守り続ける存在……そこには温かな母性のイメージが投影されている。
そして彼女は、かつての息子のように宇宙の大海原に旅立とうとしている鉄郎に、息子の帽子と戦士の銃を与えてくれる。その帽子と銃は、その先の旅の中で鉄郎が出会うべき人々とのパスポートの役割を果たしていく。

続いて、メーテルの母にして機械化帝国の女王・プロメシューム。
機械化人による支配という恐るべき野望は、裏を返せば人々に「永遠の命」を与えんとする彼女なりの理想であるとも言える。それゆえに反抗する人間に対しては冷酷非情で、野望の実現のためなら手段は選ばない。
娘であるメーテルには永遠の若さと美しさを与え、共に理想を追いかける者として深い愛情を抱いていたようだ。だからこそメーテルの裏切りに激しい怒りと絶望を抱き、娘を自分の世界から奪った “男” である鉄郎を憎悪し、鬼神となって襲いかかる……。
生命の源であり、愛深き故に愛する相手を飲み込んでしまう……そんな畏怖すべき原型としての母の像を、彼女の存在から感じられるはずだ。

そして、鉄郎の母。彼女は鉄郎の記憶の中でしか登場せず、実際はどんな女性だったのか、本当のところはわからない。
ただ、鉄郎が思い出す母は優しく、温かく、美しく……悲惨な生活の中で鉄郎をあれだけ真っ直ぐで強い少年に育てたことから、相当に芯の強い女性であったとも想像できる。その容姿がメーテルに映されているという点も含めて、理想と幻想の向こうにしか存在しない神秘的な存在である。
そして、その死が鉄郎の旅の出発点に位置していることから、実はこの物語でもっとも大事な存在のひとりと言えるだろう。

(C)松本零士/零時社・東映アニメーション

アニメージュプラス編集部

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