――懐かしいと言えば、ホワイトベースのメンバーが登場するシーンもそんな気分を味わえました。どんな音の取り組み方をされたのですか。服部 音響監督の藤野貞義さんから「あのシーンは、懐かしい面々が集まってフォトセッションしているような感じにして欲しい」と言われたんですよ(笑)。その言葉をイメージしつつ、最後にセイラさんが心配気なムードを出すので、急に不穏な和音を入れて終わらせる、みたいな感じで作らせてもらいました。これは結構難しかったですね。
――また一方、ガンダムが活躍するシーンではエレキギターを使ったロックテイストの楽曲がかかりますね。『THE ORIGIN』の楽曲には無かった方向性に新鮮さを感じました。服部 島の地下施設でガンダムがサザンクロス隊のザクを倒すところと、ドアンのザクをガンダムが助けに入って戦うシーンでかかる「ガンダムの突撃」という曲ですね。最初はエレキ主体の曲調、2回目の時はシンフォニックスタイルのサウンドに被せるようにして、僕の作ったテーマとして「ガンダムの戦い」のシーンでかけています。
――アムロの覚醒を感じさせる曲だと感じたのですが、そういう狙いはありましたか?服部 そうですね、この曲ではあとガンダムの機敏さと圧倒的な強さを表現したかったんです。ドンと構えるというよりは、素早い感じ。それって今考えると『THE ORIGIN』の反動だったのかもしれません。
――それはどういうことでしょうか?服部 『THE ORIGIN』の反省点を挙げるとすれば、大河ドラマ的な重さは表現できたのですが、もう少しスピード感があっても良かったなと思っているんです。もちろん、メインテーマのスピードを上げたバージョンは後半で手がけましたが、千両役者のガンダムとアムロが戦う『ククルス・ドアンの島』では、その部分をさらに出してみようと考えました。
また、今回はガンダムが最後に戦う前にレクイエム的な曲も流しているんですよ。サザンクロス隊と対峙する前、「さあ、いくぞ!」と再びエンジンをかけて動き出すように気持ちを切り替えていくような感じを出したかったわけです。そうした緩急の演出も、今回考えたことのひとつですね。
――では最後に、服部さんから見た作品全体の魅力についてお聞かせください。服部 先ほどの話にも出ましたが、ドアンというキャラクターを触媒にしてアムロと子供たちの成長を描いた作品だと思いました。いろいろと考えさせられますよね。
平和を守るためのひとつの解決法として「武器を捨てる」という決断をするわけですが、あの沈んでいくザクの姿を見た子供たちが、どんな大人になるのかを想像してしまうんです。もしかしたら「武器を持っていなかったら戦わなくてもいいかも」と考える大人になってくれるのかもしれないな、とかね。
この映画の元になったテレビ版の「ククルス・ドアンの島」は、シリーズの中では箸休め的なエピソードだと聞いたんですが、それ故に描くことができた良い話だったのではないでしょうか。殺伐とした戦いや主義主張のぶつかり合い以前に、「そもそも人間とは?」みたいなことを考えさせてくれる作品であり、だからこそ「安堵」という曲が合うんだろうなと思えたんですね。
>>>『ククルス・ドアンの島』懐かしのホワイトベースメンバーとRX-78-02ガンダムの名場面を見る(写真15点)(C)創通・サンライズ