• 『ククルス・ドアンの島』の音楽に込めた「時代のムード」と「緩急の演出」
  • 『ククルス・ドアンの島』の音楽に込めた「時代のムード」と「緩急の演出」
2022.06.27

『ククルス・ドアンの島』の音楽に込めた「時代のムード」と「緩急の演出」

(C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』は、ガンダムシリーズの原点であるテレビアニメ『機動戦士ガンダム』、そのシリーズ中でも異彩を放つ15話『ククルス・ドアンの島』を完全映画化。TVアニメ『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイン・アニメーションディレクターであり、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を手掛けた安彦良和さんが監督を務めたことも、大きな話題を呼んでいる。

OVA『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』に引き続き、安彦良和作品の音楽を担当した服部隆之さんのインタビュー後編は、本作でも強い印象を残したテレビシリーズのオリジナル楽曲へのアプローチ、『THE ORIGIN』の仕事を経て今回新たに取り組んだことについてお話を伺った。(全2回)

――今回の音楽は曲の1つひとつを立たせるのではなく、場面を盛り上げる演出的な方向性に舵を切っていた印象がありました。そこも意識されたところでしょうか?

服部 そこが先ほど言った『THE ORIGIN』のシャアと本作のドアンの差と言えるかもしれません。勿論音楽でインパクトを与えるやり方もありますけれど、ひとつのシーンを成立させるために、雰囲気や空気感、情感をしっかり醸成していくというのも音楽の役目であり、劇伴の在り方として理想的だと思いますから。そう言っていただけて、すごく嬉しいです。

――今回はテレビシリーズのオリジナル楽曲のアレンジも多く使われていますね。

服部 ええ。松山祐士先生や渡辺岳夫先生が書いた曲をガラっと変えることは『THE ORIGIN』ではやっていなくて、今回初めてリハーモナイズしてみました。今回はオリジナルの雰囲気を大事にしたい、という思いからで、それこそ『水戸黄門』で印籠をドン!と見せるような感じ。あそこに僕の技は何も入っていないですよ。多少はアレンジしていますが、ほとんどのファンの人は、「そのままだ」と思うでしょうね。

アレンジに関しては、いろいろと工夫させてもらっています。アムロがガンダムを探しに行く時にかかるのは、「苦き故郷 M-45」という有名な曲のアレンジ。原曲は美しく切ない世界観の曲ですが、メロディはそのままハーモニーを全部変えて、チェロのソロで聴かせる曲に変えてみました。これはアムロの心情に上手くはまって良かったです。

あと「安堵」(※TV版主題歌「翔べ!ガンダム」のインストバージョン)という曲も結構アレンジして使わせてもらっています。カーラがアムロを迎えに行く夜のシーンなどで使っているんですが、僕の解釈でアレンジしているところもあるけれど、基本オリジナルの良さを死守することを意識しました。

――オリジナルの雰囲気を感じさせることが大事だと思われたのは何故ですか。

服部 この劇中に登場するキャラクターたちが存在した時代のムードをあえて残すのはアリかな、と。両先生の曲は、70年代後半から80年代前半の世界観をすごく内包している曲なんです。今の作曲家がこのメロディを発見してもこんな曲として作らないし、まず作れない。その時代を生きた作曲家ならではの香りがするんですよ。なので、今回アレンジはしていますが、そのオリジナルの香りを活かす形でやらせていただきました。

新しいファンが観た際に、もしかしたら「何だ、この古臭い曲は」と思われるかもしれませんが、自分はそこが逆に面白いなと思うんですよ。「こういう音の世界が最初のガンダムにはあったんだよ」って伝えたいですね。

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事