• 小栗旬も出演『鋼の錬金術師』のもうひとつの結末——『シャンバラを征く者』
  • 小栗旬も出演『鋼の錬金術師』のもうひとつの結末——『シャンバラを征く者』
2022.03.05

小栗旬も出演『鋼の錬金術師』のもうひとつの結末——『シャンバラを征く者』

(C)荒川弘・HAGAREN THE MOVIE


★現実世界とリンクする錬金術世界★

『シャンバラを征く者』を語る上で欠かせないのは、アニメのオリジナル要素として付け加えられたある設定。
それは、作中の舞台だった錬金術世界はわれわれが生きる “現実世界” とつながっているパラレルワールドだった、というものだ。
錬金術世界と現実世界は “門” を通じてつながっており、錬金術を可能にするエネルギーは現実世界から供給されている。

主人公・エドは門を通り抜けて現実世界の1921年、ドイツのミュンヘンに辿り着き、いつの日か錬金術世界に戻ろうと誓い、その方法を模索しながら現実世界で生きていくーーというのが、TVシリーズの結末だった。
だから、『シャンバラを征く者』は、現実世界でもがくエドの物語として始まる。
エドは元の世界に帰る可能性をロケット工学に見出すも、研究は思うように進まず、無力感にとらわれている。
そしてエドの傍らには、ロケット工学の研究仲間のアルフォンス・ハイデリヒがいる。
その面影は、錬金術世界にいるはずの弟・アルによく似ている。
パラレルワールドなので、現実世界には錬金術世界とそっくりな人間も存在している。
だから、TVシリーズで退場してしまった人々も、別の役割を持ったキャラクターとして登場する。設定を活かしたファンサービスでもあると同時に、この劇場版をより味わい深くする要素だ。

そんなエドはやがて、新たな出会いをきっかけに意外な事件に遭遇、ある集団の謎めいた陰謀に巻き込まれて行く。
一方、錬金術世界ではアルが、兄・エドとの再会を願い、その手掛かりを得たことで動き始める。
やがてエドとアル、それぞれの身の回りに起きる出来事が不吉に連動し、錬金術世界と現実世界の双方を揺るがす未曾有の自体へと発展していく……。
▲TVシリーズの物語から2年後の1923年が舞台だ。

エドが中心となる現実世界の物語は1920年代のヨーロッパを舞台としており、当時の時代背景や実在の人物も巧みに物語に組み込まれている。
それは『ヒヲウ戦記』、『天保異聞 妖奇士』、『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』といった作品でも発揮された會川の真骨頂といえる手法。
物語に奥行きを与えると同時に、エドのドラマが観客にとっても無縁ではないという生々しさを伝えてくる。
また、主に錬金術世界で展開されるアクションは、高く評価されたTVシリーズをさらにグレードアップさせた壮大なクライマックスとして、劇場映画らしい興奮を味合わせてくれる。
現実世界の風景を丁寧に描写しながら展開する感情ドラマと、錬金術を活かしたアクションの組み合わせから生まれる濃厚な味わいは、“『鋼の錬金術』らしさ” を主軸に据えると同時に “劇場映画であること” を意識した水島監督と、制作を担当したスタジオ・ボンズのスタッフによって生み出されたものだ。
さらに、本作のためにL’Arc〜en〜Cielが書き下ろした主題歌、『Link』と『LOST HEAVEN』の2曲も作品にしっかりと寄り添い、映画の印象をより深く記憶に刻み込んでくれている。
▲本作の特徴である錬金術描写も充実。

(C)荒川弘・HAGAREN THE MOVIE

アニメージュプラス編集部

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