• 今こそ見直したい! 細田守『サマーウォーズ』が描いた〈家族〉と〈インターネット〉
  • 今こそ見直したい! 細田守『サマーウォーズ』が描いた〈家族〉と〈インターネット〉
2022.02.27

今こそ見直したい! 細田守『サマーウォーズ』が描いた〈家族〉と〈インターネット〉

(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

2月27日(日)の19時からBS12トゥエルビ『日曜アニメ劇場』で、アニメーション映画監督・細田守の作品『サマーウォーズ』が放送される。

本作は、2009年8月に劇場公開された、細田監督の7本目(短編/再上映含む)の劇場作品。
2006年『時をかける少女』で一躍世間の注目を集めた細田監督が、アニメーション映画監督として新たな一歩を踏み出した記念すべき作品であり、2021年の最新作『竜とそばかすの姫』にまで至る “夏の細田映画” のスタート地点に位置づけられる。

ある夏休みの日、数学が取り柄の内気な高校生・健二は、憧れの先輩・夏希から「婚約者のフリをして一緒に田舎に帰る」という “バイト” に誘われる。
待っていたのは、地方の旧家の大家族・陣内家。
90歳の誕生日を迎える曽祖母を筆頭とした勢揃いした親戚一同と対面し、戸惑いつつも、健二は夏希とともに過ごすひと夏の経験に心をときめかしたりもする。
だがその夜、健二の携帯に数字が羅列された謎のメールが届き、それが数学の問題だと思った健二は、回答を返信する。
そのメールは、インターネット上の仮想世界〈OZ(オズ)〉に起こりつつあるトラブルと関係していた……。
世界中の人々が集う〈OZ〉を巻き込む事件、それはやがて現実世界にも波及し、ついには世界が滅亡の危機にーー!?
そんな未曾有の事態に健二は、陣内家の人々とともに立ち向かうことになる。
▲主人公の健二
▲憧れの先輩・夏希
▲憧れの先輩との心ときめく夏……のはずが!?

夏を舞台にしたボーイ・ミツ・ガール、インターネットの仮想空間に起きるトラブル、地方の大家族の騒々しくも温かい空気感、そして魅力的なキャラクターたちを描き出す巧みな作画の芝居。
細田監督らしい要素が詰め込まれた傑作と言えるこの『サマーウォーズ』だが、映画単体の魅力もさることながら、細田監督のフィルモグラフィーと照らし合わせることでより魅力的な作品として捉えることができる。

◎〈家族〉という “大きな物語” ◎

そのひとつは〈家族〉という視点。
〈家族〉は本作以降、細田作品の重要なモチーフとなる。
次作『おおかみこどもの雨と雪』は、おおかみおとことの間に生まれた2人の子供を育てることになった女性を描き、〈母と子〉の関係がメインテーマとなった。
続く『バケモノの子』では、バケモノ界で育てられた人間の男の子の物語を通して、〈父と子〉の関係が描かれた。
そして『未来のミライ』では、妹が生まれた5歳の男の子を中心に、いわば “現代的な家族” の在り方が、子供の目を通して問われた。
その出発点である『サマーウォーズ』は、旧来の日本的大家族を都会の少年が体験していくという物語という側面を持っている。
その変遷には、細田監督自身が実生活で体験したできごと(結婚、ご子息の誕生、子育て……)と、そこから得た細田監督自身の実感が反映されている面もあるようだ。

思春期を過ぎて一度は〈家族〉から離れて独り立ちし、他人と出会って結婚し、新たな家族の一員となり、自らが親になることであらためて親子や家族について見つめ直し……という、多くの人が体験する “大きな物語” が細田作品のフィルモグラフィー全体を貫いているとも言える。
そうした “大きな物語” の出発点として『サマーウォーズ』を観ることできっと、細田作品の新しい面白さに気づけるだろう。
陣内家の一癖も二癖もある親戚たちに振り回され、余所者として警戒されるかと思えば、無遠慮に距離を詰めてくるという大家族特有の空気感。
アニメーションで巧みにデフォルメされつつどこか生々しくもあるその描写は楽しく、本作の大きな魅力になっている。
そして、それに戸惑いつつ徐々に馴染んでいく健二の姿が表現するのは、思春期を経てあらためて体験する〈家族〉との出会いなのだ。
▲騒々しい陣内家の人々だが……いざとなると頼もしい?
▲〈家族〉の声援を背に戦う健二!
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

アニメージュプラス編集部

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