• 形態、放送、配信から見るアニメの未来とは【藤津亮太スペシャル対談】
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2021.12.31

形態、放送、配信から見るアニメの未来とは【藤津亮太スペシャル対談】

『サマーゴースト』は配信で新たな火が点く可能性が? (C)サマーゴースト


編集長 そういう意味では、国立新美術館で開催された『庵野秀明展』。あれは我々世代――庵野監督はちょっと年上ですけれど――の文化の受け取り方の記録として非常に重要な意味を持っていたと思うんです。
庵野監督の人生・キャリアを軸にして、アニメ・特撮の映像カルチャーが我々の社会の中でどんな風に存在していたかを明快に見せていくじゃないですか。

藤津 ええ、入口近くの大量にある特撮系プロップ展示はインパクトありましたよね。

編集長 貴重なプロップは勿論なんですが、実家にあった私物のアニメグッズまで同じように展示してありましたからね。影響を受けたもの全てを貴賎なく並列で並べる、という展示コンセプトに震えました。

藤津 ああ、僕も作品の善し悪しをつけずに展示しているところが良いなって思ったんです。そういうところからも文化を塊で理解するのが大事なんだという意図が伝わってくる。

編集長 情報・資料・アイテム含めて「物量」を肝にした内容だったと思います。凄い量のモニターを配置して一斉に違う映像を流しているエリアは、まさにそれを体感させる場所でしたし。

藤津 たくさんの名作が流れる映像の中にグループえびせんの自主アニメ『セメダインボンドとG17号』が入ってるのも凄いんですよ。確かに庵野さんの学生時代のアニメに強い影響を与えていますけれど、普通はああいう扱いにはしないでしょうからね。こう考えていくと、『庵野秀明展』も今年の収穫として入れていいかなって思えてきました。

(編集部注)グループえびせん:1978年結成の自主アニメーション制作・上映サークル

編集長 ええ、今までのアニメ関係の展覧会の範疇を遥かに超えた一大イベントだと思います。さて、続いてのキーワードは「配信」。

藤津 Netflixの成功を見て、いろんなコンテンツ・プラットホームがオリジナルコンテンツを手がけるようになってきた。具体的なタイトルで言うとディズニープラスの『スター・ウォーズ:ビジョンズ』、あとクランチロールの『BLADE RUNNER: BLACK LOTUS』。ヒットしたSFタイトルのスピンオフをアニメで展開するのは多分『アニマトリックス』辺りからなんですけれど、それが現在契約者の囲い込みをするツールとして使われているわけです。

(編集部注)『アニマトリックス』:映画『マトリックス』の世界観をモチーフに9つの短編で構成された2003年のオムニバスアニメ作品。前田真宏、渡辺信一郎、川尻善昭、小池健、森本晃司らが監督を務めた。

編集長 それは日本のアニメーションがすごくクールな存在である、という認識によるものですね。

藤津 はい、しかし最近の配信コンテンツを観ていると、そんな日本の伝統芸能的なスタイルは韓国のスタジオでも手がけられるようになってきているわけです。配信の現場では、世界から見た日本のアニメが置かれてる現状を一番リアルに感じることができるような気がしています。

>>>『カラミティ』『スター・ウォーズ:ビジョンズ』ほか、紹介作品のビジュアルを見る(写真5点)

藤津亮太(ふじつ・りょうた)
1968年生まれ。アニメ評論家。新聞記者、週刊誌編集部を経てフリーライターに。アニメ・マンガ雑誌を中心に執筆活動を行う。近著は『アニメと戦争』(日本評論社)、『アニメの輪郭 主題・作家・手法をめぐって』(青土社)。

治郎丸慎也(じろまる・しんや)
1968年生まれ。1991年徳間書店に入社、月刊誌・週刊誌の編集部などを経て、2020年よりアニメージュプラス編集長に。

アニメージュプラス編集部

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