• 形態、放送、配信から見るアニメの未来とは【藤津亮太スペシャル対談】
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2021.12.31

形態、放送、配信から見るアニメの未来とは【藤津亮太スペシャル対談】

『サマーゴースト』は配信で新たな火が点く可能性が? (C)サマーゴースト


編集長 次のキーワードは、「『鬼滅の刃』フジテレビで放送」。これは、一体どういうことでしょうか。

藤津 これは『金曜ロードショー』で2週にわたって『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』TVシリーズの特別編集版、『外伝―永遠と自動書記人形―』が放送されたことと併せて大きな出来事だと思っています。

簡単に言うと、在京キー局のプライムタイムからアニメがどんどん減って、製作委員会が深夜枠を買って放送する形でTVアニメは残っているのが現状なわけです。首都圏ではTOKYO MXの放送が増えて、MXをメインに東名阪3局+配信+BSという形で全国フォローする体制を組んで、これで当たったら劇場版を公開――みたいな方程式が、ここ10年くらい定着してきたわけです。

ところが『鬼滅の刃』はご存じ通りのメガメガヒットで、フジテレビが「次はうちで」と手を上げて結果再放送をすることになるわけです。果たしてこれが製作委員会にとってどれだけのメリットがあるのか、僕にはまだよくわからない部分があるんですが……。

編集長 確かに。続く『遊郭編』へと繋ぐ導線という意味において、フジテレビのメリットの部分は予想できますけれど。

藤津 ひとつハッキリ言えるのは、大ヒットコースに乗ったらキー局でもう1回放送できる土壌が作られたっていうことです。例えば、『魔法少女まどかマギカ』は新作制作も発表されていますが(『劇場版魔法少女まどかマギカ<ワルプルギスの廻天>』)、その時期に合わせてTVシリーズや先の劇場版3作をまったく別のキー局が浅い時間帯に放送することもありうるということです。そういう可能性が出てきたのは実に面白いな、と。

編集長 これは作品の評価が固まっていて、ある程度の顧客が見えてるからこそできる戦略ではありますよね。

藤津 そうですね。これまでも新作に合わせて旧作をTVでかけるという施策はありましたけれど、それを地上波のキー局がやるということが驚きでした。TVアニメの新しい位置づけがあり得るのかも、という予感を感じましたね。

編集長 そういう意味では、NHKも『進撃の巨人』『ラブライブ!』など同様の施策を行っている印象がありますけれど。

藤津 NHKも、過去作の再放送をBS2の『衛星アニメ劇場』などでやっていたんですよね。おそらくNHKの中に、アニメにもっと力を入れたほうがいい、と考えている方たちがいらっしゃるんじゃないですか。

編集長 やはりそこは若いアニメが好きな世代を取り込みたい、という意図があるのではないですか。

藤津 それはあるんでしょうね。とはいえ、アニメ世代と言っても、アニメに親しんでいる最初の世代はもうすでに還暦を超え始めてるっていう。だからあんまり「アニメ世代」とくくれないような気はします。

編集長 確かに。同じ「アニメ好き」と言えども、世代間には大きな壁がありますから。僕らの世代だと、アニメを楽しむことってそれこそ情報や作品数も限られている中で結構な気合を入れて取り組む趣味だったじゃないですか。でも、今の若い世代は様々な趣味の選択肢の中に既にアニメが入ってるんですよね。

藤津 ええ、アニメ的なものが世の中に溢れていますものね。これだけいっぱいあると、水道水みたいに「いつもあるもの」みたいな感じになっていると思うんですよね。

アニメージュプラス編集部

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