• 形態、放送、配信から見るアニメの未来とは【藤津亮太スペシャル対談】
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2021.12.31

形態、放送、配信から見るアニメの未来とは【藤津亮太スペシャル対談】

『サマーゴースト』は配信で新たな火が点く可能性が? (C)サマーゴースト

2021年もあとわずか。数多くのアニメ作品が放送・上映・配信された。そこにはどんな注目作があったのか、またアニメ界の今後を占うどんな動きがあったのか――アニメ評論家・藤津亮太とアニメージュプラス編集長・治郎丸が1年のアニメシーンを振りかえり、2022年への期待を語った対談を全3回で掲載する。
第2回は、2021年の話題作を通して今後のアニメシーンを変えていく様々な要素に注目していく。

編集長 2021年のアニメ作品で、まだ注目すべきタイトルはありますか。

藤津 『100日間生きたワニ』は公開時に叩かれていましたけど、実はすごく考えられた映像化なので、そういう工夫があるところは評価するべきだと思うんです。あと『映画 クレヨンしんちゃん 謎メキ! 花の天カス学園』も、『しんちゃん』なりの本格ミステリーの作りで楽しめました。

編集長 こうタイトルを並べていくだけでも、2021年が実に多彩なラインナップだったことを実感できますね。

藤津 そうですね。個人的にはレミ・シャイエ監督の『カラミティ』が吹き替えで公開されたのも大きいです。伝説の女性ガンマン、カラミティ・ジェーンの少女時代を描いたこの作品は同監督の前作『ロング・ウェイ・ノース』(2015年・日本公開2019年)よりもアクションやユーモアが強化されてエンタメ性が高くなっています。西部開拓時代のアメリカを舞台にした女性の自立というテーマを持つ海外アニメを、間口の広い形で観られるというのは素晴らしいと思います。
▲『カラミティ』より。(C)2020 Maybe Movies ,Norlum ,2 Minutes ,France 3 Cinema

あとloundraw監督の『サマーゴースト』も印象的な作品でした。上映時間40分っていう尺には正直面くらったんですが(笑)、今の子供たちにとって一番接触時間が長いメディアっておそらくYouTubeにアップされている動画なんですよ。そうすると下手すると、観ているアニメもボカロPの歌い手さんのMVの方が数多く触れているかもしれない。

編集長 ああ、むしろ短編アニメへの親近感の方が高いかもしれないわけですね。

藤津 そういう状況を当たり前に思ってる世代が新しい形でアニメを発表し始めている、という印象を受けました。内容もMVとの親和性が高いものでした。でも、まだアニメ業界はそこをあまり意識してないんですよね。「短いものだし、ちょっと変わった仕事だな」くらいの認識。実は僕自身もそんな感じだったので、そういうところに、実は未来の鉱脈があるんじゃないかっていう気がしているんですね。

編集長 新海誠監督も短編『ほしのこえ』からブレイクしましたし、そもそもキャリアのスタートがPCゲームのOPムービーですものね。

藤津 そう。だから下手な長編を作るより40分くらいの短編の方が今の世代の心を揺さぶる何かを乗っけられる可能性はあるんじゃないか、と。

『サマーゴースト』の描いている世界は。言っちゃうと中二病っぽいところがあるけど、「それこそが自分たちの世界だ」って思う人達が間違いなくいるんですよね。彼らが実際に劇場に行くかどうかはわからないけど、観たら気にいるはずなんですよね。だから実はこの作品、配信になってからが本当の勝負なんじゃないかな、とも思えるんです。

アニメージュプラス編集部

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