• 【必殺仕置人大全】編著者が語り尽くすファン感涙の徹底研究本誕生の秘密
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2023.11.24

【必殺仕置人大全】編著者が語り尽くすファン感涙の徹底研究本誕生の秘密

「必殺仕置人大全」表紙 (C)松竹・ABCテレビ


――テキスト・ページ数共に前2冊を超えるボリュームとなりましたが、執筆作業の苦労も相当なものではなかったでしょうか。

この手の本は各話解説を何人かのライターで分担するのが普通で、今回もその予定だったのですが、スケジュールのタイトさから「あれこれ原稿のやり取りをしていたら間に合わない!」と判断して全話を自分で書きまして、すぐ後悔しました(笑)。
最初に執筆したのが『新仕置人』の第7話「貸借無用」だったのですが、「えっ、この作業を67回やるのか……」と暗い気持ちに。一発勝負のノリでどんどん書いていったので、 そういうアドリブのライブ感はありますね。
▲「必殺仕置人大全」より

本来もっと丁寧に時間をかけて作るべきだったのですが、自分のスケジュールの問題もあって、『必殺』同様の納品ギリギリになってしまいました。反省点もありますが、このタイミングじゃないと『仕置人』50周年に合わせられなかったし、予期せず勢いのある本になっているので結果オーライです!

――今回はたくさんの執筆者が参加されていますが、大きな恩恵や刺激を受けましたか。

高鳥 はい、多くの方が必殺ファンおなじみのベテランの書き手で、リアルタイムの視聴体験やそれぞれの得意分野について執筆していただきました。まさに「腕に覚えあり」のメンバーが集まった感があります。

私は80年代の仕事人ブームすら知らない再放送世代なので、今回はみなさんの参加が不可欠だったと思います。立東舎の本をきっかけに會川昇さんや秋田英夫さんをはじめ、いろんな出会いがあり、みなさんの原稿を読んだり、やり取りするのが楽しすぎて、完全に自分の首を絞めましたね。

――今回は非常に多くの本編・メイキングのスチール写真が掲載されているのも大きな見どころとなっています。こちらの掲載の経緯をお教え下さい。
▲「必殺仕置人大全」より

ガイドブックは写真命だと思ったので、朝日放送が保管しているスチールをふんだんに使いました。合計100枚以上、スチールの使用料というのは近年の映画本にとって大きなネックなのですが、慎重かつ大胆な交渉でなんとかなりました。「こんなものが!」という初出しの激レア写真もあると思います。
ただし全話分は残っていなくて、一部は散逸しているんですね。実は表紙の主水の写真も朝日放送に残っておらず、行方不明になっていたものを関係各位の尽力で何とか入手しました。

また歴代の必殺シリーズを撮り続けたスチールマンの牧野譲さんからも写真を提供していただき、撮影現場のスナップはスタッフ各氏からお借りしたものもあります。そのあたりは立東舎の本がないと実現できなかった部分ですね。

――その他、高鳥さんが考える「必殺仕置人大全」のお薦めポイントがありましたら、お教えください。

メインのキャストやスタッフだけでなく、各話に出演した脇役の俳優さんにもなるべく言及しようと思いました。このあたりは主に担当編集さんが国会図書館で調べてくれたんですが、従来の「国会図書館オンライン」だけでなく「国会図書館デジタルコレクション」というデータベースがリニューアルされて、これがキーワードごとに雑誌記事などの情報をめちゃくちゃ拾うので嬉しい悲鳴なんですよ。人によっては情報が集まりすぎて完全に誤算でした。
あとはノンクレジットのスタッフ情報をわかる限り載せたりして、なるべくシリーズを支えた方々に敬意を払おうと思いました。

それと反響が大きいのは「シナリオと本編の違い」ですね。コレクターの方から台本をお借りしたり図書館でチェックしたのですが、例えば「裏切無用」で鉄が主水をボコボコにリンチする場面など「このシーン、このセリフは脚本になく、現場改訂だったのか!」という驚きがいくつもありました。
脚本を変えることへの是非はありますが、『必殺』の場合は自由な空気があり、それが作品の勢いにも反映されています。もちろん「ここは脚本のままのほうがよかったなぁ」というケースもありますが、そこは個々で判断していただければ。そうやって映像と活字を往復する楽しみ方もできますね。

あと、こないだ阪神タイガースが日本一になりましたが、『新仕置人』には「寅の会」という殺し屋組織が登場して元締の「虎」を初代ミスタータイガースの藤村富美男さんが演じているので、阪神ファンこそ本書を読むタイミングではないでしょうか。
わたしは野球のルールすらよく知らない人間ですが、どう見てもバットみたいな長い棍棒で裏切り者を始末したり、鉄球を打ち返して敵の顔面をバラバラにしたりしていますので、どうぞご確認ください。

――本書の好評を受けて、今後どのような企画の展開を考えておられますか。

現在はインタビュー集の第3弾『必殺シリーズ始末 最後の大仕事』の取材中です。来年1月発売予定なのですが、すでに歴代最多人数が確定しているので、えらいこっちゃなと……。また1年で3冊を出し、すべて重版出来と世間から必殺本の需要が証明されたのではないでしょうか。ほかにも切り口はたくさんありますし、どんどん出ないかなと一読者の立場で願っています。

それと個人的にはノンフィクション系の単行本企画が2つほど止まっているので、そっちも進めなきゃと思っています。なにやら必殺芸人みたいな1年でしたが、出せるうちが花なので、このまま突っ走るしかないですね。

高鳥都(たかとり みやこ)
1980年生まれ。2010年よりライターとしての活動をスタートし、雑誌を中心にルポやインタビューを発表。著書に『必殺シリーズ秘史 50年目の告白録』『必殺シリーズ異聞 27人の回想録』、編著に『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』があり、『漫画+映画!』ほか共著多数。

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(C)松竹・ABCテレビ

アニメージュプラス編集部

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