• 関係者30名登場の濃厚インタビュー本で迫る「必殺シリーズ」不変の魅力
  • 関係者30名登場の濃厚インタビュー本で迫る「必殺シリーズ」不変の魅力
2022.09.15

関係者30名登場の濃厚インタビュー本で迫る「必殺シリーズ」不変の魅力

高鳥都『必殺シリーズ秘史 50年目の告白録』(立東舎)書影

人気時代劇ドラマ「必殺シリーズ」の放送50周年を記念して、初期の現場スタッフを中心に30名の関係者インタビューを収録した書籍『必殺シリーズ秘史 50年目の告白録』が登場する。江戸時代を舞台に展開されるアウトローたちの裏稼業をハードに描いた作品群の魅力に迫った著者・高鳥都氏に話をうかがった。

朝日放送・松竹の制作による必殺シリーズは、池波正太郎『仕掛人・藤枝梅安』を原作として1972年9月~1973年3月に放送された『必殺仕掛人』から始まった。
金をもらって恨みをはらす殺し屋たちを主人公にしたアウトロー時代劇は、いわゆる「勧善懲悪」を放棄したダークな作風、深いキャラクター描写、斬新な映像表現から人気シリーズとなり、特に藤田まことが中村主水を演じた『必殺仕事人』はシリーズを重ねるごとにバラエティ感と娯楽性を強め、お茶の間の人気ドラマシリーズとしての地位を確立。今年1月にも新作テレビスペシャル『必殺仕事人』が放映されている。

1980年生まれの高鳥氏と必殺シリーズの出会いは、どのようなものだったのだろうか。

「小学生のころから『三匹が斬る!』などのテレビ時代劇が好きだったんですが、次第にラストの「であえ、であえ!」で主人公に皆殺しにされる敵方の家臣がかわいそうになってきて、再放送の『必殺』はピンポイントで悪人しか殺さないのでグッと共感できました。
中学生の頃に土曜早朝に再放送されていた『必殺仕事人Ⅴ』から本格的に観始め、神戸で女子大生をやってた姉に『必殺仕置人』の第1話を録画して送ってもらい、さらにハマりました。念仏の鉄(山﨑努)と中村主水が初めて登場する、シリーズ第2弾の傑作回です。その直後に阪神・淡路大震災が起きてしまい、続きは観れなくなったのですが……。
その頃、ちょうど必殺シリーズや70年代の作品を再評価する本が次々と出た時期でもあったので、そういう文章を読んで、まだ見ぬ作品の妄想を膨らませたりしました」

高鳥氏は必殺シリーズのどんなところに魅力を感じていたのか。

「シンプルに作品トータルとしての “かっこよさ” でしょうか。まず、昼行灯の同心で婿養子の中村主水が殺し屋という、昼と夜の顔のギャップ。いわゆる『ナメてた相手が実は殺人マシンでした』みたいなパターンですが、『必殺』は時代劇なのでフィクションとしてのカタルシスも大きいです。
脚本や演出の力も強く感じられます。旧来の映画の現場に比べて若いスタッフの多かった京都映画(現・松竹撮影所)の必殺シリーズは、ときに『邪道』と批判されながらテレビ映画という制約の中で新しい表現に挑戦していったんです。光と影を駆使したコントラストの強い映像、音楽や効果音がアウトローのドラマを引き立てます。あと、1話完結の1時間ものというコンパクトなフォーマットも良いですね」

本書作成にあたり具体的なコンセプトや目標はあったのだろうか。

「『必殺』というのは、時代劇のなかでも異色かつファンの多いジャンルです。今年も『仕事人』のスペシャル版が放送され、過去作の再放送や配信の機会も多い。その知名度や人気を利用して、なるべく多くのパートのスタッフにインタビューしたいと思いました。
どうしても監督や撮影・照明が注目されがちですが、そこだけでなく製作部やスチールマンといったあまり表に出ない方々の声も残したかった。関係各位の協力もあり、亡くなられた方以外の候補者全員にご参加いただくことができました」

アニメージュプラス編集部

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