• 『ウルトラマンブレーザー』ワンカット空中戦はこうして生まれた! 田口清隆&小柳啓伍が語る裏話
  • 『ウルトラマンブレーザー』ワンカット空中戦はこうして生まれた! 田口清隆&小柳啓伍が語る裏話
2023.10.21

『ウルトラマンブレーザー』ワンカット空中戦はこうして生まれた! 田口清隆&小柳啓伍が語る裏話

小柳啓伍さん(左)と田口清隆監督(右) (C)円谷プロ (C)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京


◆度肝を抜く空中戦の誕生秘話◆

――第14話は、戦闘シーンが凄まじいことになっていましたね。一度も地上に降りず、空中戦オンリーで描き切るという。

田口 小柳さんの空戦好きが出ましたね。確か候補の怪獣から小柳さんに一体選んでもらって、そこから脚本を書いたんだっけ?

小柳 そうでしたね。

田口 それで上がってきた脚本を読んだら、「あれ? 着地しないなぁ、怪獣」と思って(笑)。

小柳 田口さんに言われて、初めて気がつきました(汗)。

田口 「一回着地させないと」って言いかけたときに、「この怪獣(デルタンダル)なら、ギニョール(※手で操作する造形物)と飛び人形だけでイケるんじゃないか?」と気づいたんです。造形部さんに相談したら、「面白いんじゃない?」と言ってくださって、じゃあこれで行くかと。あとは合成カット数の問題。空中戦は全部合成カットになるから、合成のカット数が限られている中、全て空中戦というのは普段なら考えられないことなんです。でも、第15話は逆に、ずっと地面にいるガヴァドンだった。

小柳 確かに!

田口 「第15話は合成そんなにいらないから、第14話に合成カットを全振りすればイケるんじゃないか?」と、今度は合成部さんに相談しました。僕としても、変身してから「シュワッチ!」で帰るまでをワンカットでやりたいと、ずっと前から考えていたんです。そんな機会いままでなかったし、できるわけないと諦めていたんですが、ついにその時が来たぞ、と(笑)。ただ、やりたいことを伝えたら現場は騒然ですよ。

一同 (笑)

田口 絵コンテを見てみんなが「うーん」ってなっているところを、「ちゃんと説明するから話を聞いて」みたいな感じで(笑)。

小柳 書いたことをそのままやらせてもらえて、僕としてはありがたかったんですが……(苦笑)。「降ろしたほうが」と言ったんですが、田口さんが「いや、いいよ」と。

田口 よくウルトラマンシリーズの脚本を書いている方だったら、気を遣って絶対に着地させちゃうと思うんです。「久々に現場のことを考えていない脚本が来たな!」と思いましたね。

一同 (笑)

田口 小柳さんが書いてきたなら、やらないわけにはいけないだろうと。おそらく後にも先にも、こんなこと誰もやらないだろうし(笑)。

――『ウルトラマンR/B』の第5話でもワンカットで空中戦を描いていたので、てっきり田口監督発信のアイデアかと思っていました。

田口 もちろん脚本にワンカットで、って書いていたわけじゃなく、読んで「これは凄いワンカットをやれる!」と思ったんです。さかのぼると『ウルトラマンオーブ』の第1話からやってはいるんですが。そもそも長回しの映像が好きだから、映画を観ていてもカットを割るのをやめた瞬間、ちょっと前のめりになるんです。「これ、どこまでいく?」「あっ、ここで割らなかった!」みたいな(笑)。あと、板野一郎さんが参加した『ULTRAMAN』(※2004年公開の映画)や『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』で、ウルトラマン版の板野サーカスをやっていたじゃないですか。あれが僕はすごく好きで、自分でも挑戦しているんです。以前板野さんから、直接お話を伺う機会もあって。第14話の空中戦は、いままでやっていた長回しと、板野サーカス的な演出の総決算だと思って挑戦しました。


(C)円谷プロ (C)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京

――その一方で第14話は、V99を巡る縦軸の物語が本格的に動き出したエピソードでもありました。

田口 そうですね。子どもたちにとっては難しい話だからこそ、戦闘シーンはとんでもないものを見せたいという気持ちもあって。ここから縦軸の要素が色濃く出てきますが、各話完結で毎回を短編SFとして面白くするという、大前提は今後も損なわないようにしているつもりです。

――実際、シリアスな第14話の次がガヴァドン回でしたからね。

小柳 温度差で風邪を引きそうになるというか(笑)。

田口 まぁそれがウルトラマンシリーズ、特に僕が大好きな初代の良さだと思っているので。各監督が切磋琢磨し、自分の個性を色濃く出して作った結果、一本一本が面白いというのが僕の理想です。

――話を戻すと、終盤のエミとゲントのシーンはとても印象的でした。二人の関係性がよく表れていて。

田口 あそこは搗宮姫奈をキャスティングして良かったと、心から思った瞬間でした。エミ(搗宮さん)は、僕が「今回の脚本に何か意見はある?」「疑問に思っていることは?」と聞いても、普段は「大丈夫です!」ってあっけらかんと返す子なんです。

小柳 リアルにエミみたいな方なんですね。

田口 そうそう。だけど、第14話はムードが切り替わる重要な話で、エミには空いた時間に「この話はこういう意図があるんだ」と説明したり、レツさん(加藤雅也さん)と二人で話している場面もあったりして。みんなでエミを手塩にかけたんですが、それに彼女も応えてくれた。ラストのレツさんに歯向かうシーンなんかは、一対一で芝居を作っていて、いい顔をしてくれました。

小柳 朝9時の番組とは思えない、息を?むような表情でした。

田口 ゲント隊長(蕨野友也さん)も、「ここをしっかりやらないと、この先崩壊するからちゃんとやりたい」みたいなことを言ってくれて。レツさんも脚本の納得いかないところを、ズバズバ言ってくださいましたし。みんなで丁寧に作って、この先の流れのいい弾みにもなったと思うので、自分でもお気に入りの回です。


(C)円谷プロ (C)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事