文筆家・切通理作さんが店主を務める古書店「ネオ書房@ワンダー店」が神保町にオープン。それを記念して、現在店内にてイラストレーター・開田裕治さんの個展「開田裕治の怪獣万華鏡」が開催されている(~4月23日まで)。「怪獣絵師」の異名を持ち、長きにわたり様々な怪獣を描き続けてきた開田さんに、今回の個展の見どころ、また怪獣という存在の魅力について改めて語っていただいた。▲開田裕治さん(「開田裕治の怪獣万華鏡」会場にて)
――まず、今回の個展開催のきっかけから聞かせて頂けますか。開田 切通さんとは古い付き合いなんですが、阿佐ヶ谷のネオ書房が開店した時から「何か一緒にやりましょう」というお話をしていたんです。最初はトークイベントでも、という話でしたが、今回新店にご協力する形で最近の代表的な作品をまとめて展示することになりました。
――切通さんから見た、開田さんの絵の魅力は何だと思いますか。切通理作 子供の頃に特撮作品を観る時って、特撮技術の足りない部分を脳内でドラマの中の登場人物の視点を持ってイメージ補完させていることが多かったと思うんですが、開田さんの絵はまさにそれを形にしたものだと思うんですよ。
怪獣だけでなくその世界観も取り込んで、観る人をその世界へ没入させてくれる絵を描く人って、開田さんしかいないんじゃないでしょうか。
――何か展示のコンセプト的なものなどはありますか。開田 版権物の展示は結構やっているんですが、今回はオリジナルの怪獣イラストをメインに展示することにしました。作品を見てもらうことで、私が抱いている怪獣という存在のイメージを理解して頂けるんじゃないかと思っています。
あと私はボードゲーム「KAIJU ON THE EARTH」シリーズのパッケージイラストを担当しているんですが、こちらも展示します。商品の箱ではなく、1枚のイラストとしてまとめて見ていただける貴重な機会になると思います。
▲『KAIJU ON THE EARTH』/怪獣災害戦略ボードゲーム「KAIJU ON THE EARTH」シーズン1ティザーイラスト (C)2019 Arclight, lnc. / Drosselmeyer & Co. Ltd.
――ちなみに、本展用に新規イラストを描き下ろされたりされているのでしょうか。開田 がっつりとした描き下ろしはないんですが、最近よく色紙に怪獣のドローイングをしていまして、そちらはいくつか描き下ろして展示販売します。
――開田さんは積極的に原画展を開催されたり、グループ展に参加されるなど、ファンとの触れ合いを大切にしていると思うのですが、そういった場への思いなどはありますか。開田 私の仕事はパッケージイラストが多いので、それを受け取る人との交流は基本ないんですよ。漫画家さんならファンレターなんかが来たりするんでしょうけど、自分には知り合いや関係者以外にそういう反応はなくてね。今はSNSなどを通して感想なんかも戴けますけれど、サイン会などで直接ファンの方とお話とかさせていただけると「ああ、僕にもファンがいたんだな……」と感じられますし。
――ええっ、ちょっと信じられない状況なんですが。開田 いえいえ、仕事を始めてから20年くらいは本当にそんな感じだったんですよ。ただ、ただ、そういう意味ではそのおかげで自分の路線をずっと崩さずに来れたのだと思いますね。反響を気にせず、家に籠もってひたすら自分の思うままに描く事が出来ましたし、ここまで来たら「開田裕治はこういう絵を描く人」という認識も固まってくれているでしょうし(笑)。
――オリジナル怪獣のデザインアイデアはどういうところから出てくるものですか。また、そのためにどのようなインプットを心がけていますか。開田 私は職業としてデザインを手掛けているわけではないので、あまり熱心にインプットをしているわけではありませんが、強いて言うなら、興味のあるものを観たり出かけたりすることが後の発想につながっているんだと思います。
あと最近はウルトラマンやゴジラの新作が定期的にあることからか、他の方が描かれた怪獣のイラストが増えてきていて、それも大きな刺激になっています。
先ほどの話じゃないですが、どうしても自分のカラーみたいなものができてしまっていて、ある意味保守的になっているという反省があるんですが、ネットや海外の画集などではこちらが予想もしなかった、ぶっ飛んだ発想のイラストを見ることができて参考にすることも多いですよ。