• 【独占取材】『芸人アニメ監督』で炸裂した〈天才〉「いおり」の正体に肉薄!
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2022.06.11

【独占取材】『芸人アニメ監督』で炸裂した〈天才〉「いおり」の正体に肉薄!

5匹に見えるけれど1匹のパンダといおり


★ポップな絵柄と深遠なメッセージ★

ーーキャラクターたちの特徴やセリフもインパクトが大きいですよね。たとえば「カニが海の中で泡を出す音」とか……何それ!? と戸惑う人は多いと思います(笑)。

いおり 宮沢賢治の「クラムボンはかぷかぷわらったよ」ってあるじゃないですか。あれがすごく好きで。でも、クラムボンって何だかわかっていないじゃないですか。で。「あれはカニだ」とかいろいろ言われているけど、決めつけてほしくないというか、あれは何だかわからないものだからいいんだという気持ちがあって……あ、でも “「クラムボン」が好き”の話といおりのカニは別です。

ーーあ、別なんですね(笑)。

いおり でも、そういう「何だかわからない」というシーンを印象づけたいなという気持ちはあります。

ーー確かに「カニが海の中で泡を出す音」って、何だかわからないですけど何となく「ああ、そうなのか」と感じます(笑)。全編、そんな感覚だらけでした。あと、耳がステーキの犬とかも、その発想は何だろう? と。

いおり いつも思っていたんですよ。犬の耳ってステーキがムニョンってついてるみたいだなって。

ーー5匹に見えるけど1匹のパンダというのもミステリアスです。

いおり 「決めつけなくてもいいこと」ってありますよね。人というものは、自分が見たことのないものを見た時に必ず自分が知っている何かに関連付けて、固定した何かに決めたがるものですよね。でも、新しいものを見た時に「これはこういうもの」ってそのまま受け入れられるといいですよね。

ーーつまり「なぜ5匹に見えるのに1匹なんだろう?」ではなくて「5匹に見えるけど1匹のパンダ」として、そのまま受け入れる。

いおり はい!

ーーそして最後は隕石が落下して舞台になった星が何の脈略もなく滅亡する……という衝撃で幕を閉じますが。

いおり いおりの中でおもしろいって思うものが「台無し」なんですよ。ずっとずっと丁寧に積み上げられたものが結局台無しになって、何もなかった、みたいなことがすごくおもしろいと思っちゃって。

人生もそうじゃないですか。先のことって見えないのに、「ああなったらどうしよう」「こうなったらどうしよう」っていろいろ考えて踏み出せなくなる。でも、そうこうしているあいだに人には必ず死が訪れるんです。それも何時、どのタイミングで訪れるかわからないじゃないですよね。若いのに突然、事故で死んじゃうかもしれなし、ものスゴく長生きするかもしれないし。

だから、丁寧に後先のことを考えてやっていても、台無しになっちゃうかもしれない。好きなことは好きなうちにやったほうがいい……というメッセージです。

ーーパンクですね。

いおり パンクですか?(笑)

ーー作品の見た目は可愛いのにパンク。でも「可愛い」と「パンク」は実は相性がいので、なるほどと思いました。

いおり ありがとうございます!

ーーとにかく可愛い絵ですが、昔からこういう世界がお好きで描かれていたんですか。

いおり はい、海外のお菓子のパッケージとかが大好きで。美大に入ったきっかけも、何となくそういうのが生み出せるようになりたいなと思ったからです。もともと『フルハウス』とか『スポンジ・ボブ』とか『テレタビーズ』とか、そういうものを物心ついた頃から自然と好んで観てました。

ーー色使いが華やかだけど少し毒々しかったりするところとか、確かにそんな雰囲気ですね。

いおり ありがとうございます。海外っぽさ、エキゾチックな感じ、可愛いけれどちょっとグロテスクというか、迫力があるというか、ホワンとした可愛いさではない強めの可愛さみたいなものに憧れていて、自分なりにそんな風に描ければいいなと思っています。

ーー『スポンジ・ボブ』なども可愛いと言えば可愛いですが、見方によっては気味悪かったり怖かったりしますからね。

いおり すごい原色だったり、ありえない配色だったりするのに可愛いもの。そういうのを目指しています。今のところ白とか茶色とかで大人しめですけれど、本当はもっと過激な色使いもしてみたいです。熊だから茶色とかじゃなくて、何色でもいい。グラデーションになっていてもいいし。

ーーそういう絵の世界、そしてテーマや表現したいものを、今回一緒に作ってくれたアニメのスタッフのみなさんに伝えたときはどんな反応でしたか?

いおり みなさん揃って、口が開いていました(笑)。

ーー(笑)。

いおり でも、すぐに受け入れてくれました。だから最初の口が開いたリアクションは、TVだからやっていたんじゃないかなって思ってます。本当はすぐに理解してくれていたけど、TVだから理解してない風を装ってくれてたんじゃないかなと。

ーーということは、制作がはじまったらみなさん、いおりさんの頭の中のイメージをどんどん形にしてくれて。

いおり しかも、いおりが伝えたことを汲み取って「こうしたほうがおもしろくなりそうじゃないですか」って、もっと良くなる案を出してくれたりして。いおりが言うのもおこがましいですが、やっぱりプロの人はスゴいって実感しました。だから、できあがった作品は自分のイメージ以上でした。大満足でした!

ーーそれも含めて「してやったり」だったわけですね。

いおり はい!

ーーこの記事が出る頃には番組も放送されていて、作品はYouTube等でも公開されています。視聴者のみなさんにいおりさんの世界は届きそうでしょうか?

いおり どうでしょうね……。「いおり」という名前はまだみんなに知れわたっていないですから、最初は多分みんな舐めて見ると思うんですよ。「こんな知らない女の子が作ったアニメなんて」みたいな。そこを打ち破っていきたいですね。

ーー作品を見てくれた人に何かメッセージはありますか。

いおり メッセージは全部、アニメーションにも詰め込みましたけど……みんな自分が好きなことをやってほしいですね。やっぱり何かする時って、他人に目や人の意見を気にしがちですよね。何かを始めるときに躊躇してしまう原因って多分、人に何か言われたらどうしようみたいな心配が大きいと思うんです。

でも、自分の人生だから、自分のやりたいことをやってほしい。自分のことを見つめていたら、あまり他人のことって気にならないと思うんですよ。イジメの原因もそこだと思っていて。自分のことを理解していないからこそ、他人のことが気になって否定したくなると思うんですね。

だから、人のことよりはまず自分のことを好きになりましょう! というのがメッセージです。あと、あの作品のキャラクターたち、性別は決めていないんですよ。そういうところも何かを考えたり、受け入れたりするきっかけになればいいなと思っています。

(C)東映アニメーション

アニメージュプラス編集部

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