オトコ篇1位『SPY×FAMILY』 遠藤達哉(集英社) 初出が「少年ジャンプ+」という配信雑誌なのがまだ違和感があります。『ファイアパンチ』がはじまってから時々見ていましたが、やはり手に取れる雑誌じゃないと、媒体に対する幻想がわかず、愛着にまで育たないのです。今年は、同じ「少年ジャンプ+」初出の
『彼方のアストラ』がマンガ大賞2019を受賞して、アニメ化されて好評を博したりもして、どんどん時代は変化しており、「幻想」なんて言っているとますますオールドファッションに拍車がかかってしまうのかもしれません。
オトコ篇2位 『ロボ・サピエンス前史』 島田虎之介(講談社) 小津安二郎のようなテンポの島田作品は2002年『ラスト.ワルツ―Secret story tour』から愛読していたので、寿ぎたいと思います。台風の日に上下巻ともカバンに入れていて、雨に濡れてシナってしまったので再度買おうか考え中。業田良家が
『機械仕掛けの愛』を描いた時以上に意外性がありました。
オトコ篇第3位『僕の心のヤバイやつ』 桜井のりお(秋田書店) オトコ篇ではこれだけ読んでいませんでした。2巻のカバー絵のフトモモは、チャンピオンコミックスということで内田亜紀の『あんどろトリオ』を彷彿とさせたのですが、それで買うほど最早若くはないのです、といったん書いたのですが、読まずに触れるのは失礼なので読了しました。
『あんどろトリオ』ではなかったのですが、ディテールに淫する由緒ただしい変態もので、TAGRO
『変ゼミ』や福満しげゆき作品、もっと言えば手塚治虫にも通じるりっぱな漫画でした。煩悩おそるべし。
オトコ篇10位まででは、5位の
『水は海に向かって流れる』が気に入っています。田島列島の作品はむかしの小劇場演劇のにおい(たとえば岩松了とか)もして、それこそネットフリックスでドラマ化してほしいと思います。6位
『鬼滅の刃』はアニメ化して大ブレイク。殺伐としたものを排除しようとする傾向が強い昨今の風潮をうまくかわしています。原作はノイズ(未整理の線)が多く、それが安定を許さない魅力となっている独特な絵柄(原作者名も分かりやすさに背を向けていますし)なのですが、アニメでは動かすために整理されているところが視聴しやすくなって、人気を得ています。勝手な希望ですが
『海獣の子供』のようなタッチの、番外編アニメも観てみたいところです。あと、9位の
『パンダ探偵社』も先がたのしみです。とりあえず今は全作品読みました。
それではオンナ篇、先にも触れましたが――
オンナ篇1位『さよならミニスカート』 牧野あおい(集英社) 『さよならミニスカート』は帯で「無関心な女子はいても、無関係な女子はいない」と記されていましたが、「男」こそ「無関心」であってはいけないと思っています。先日映画となった、第23回手塚治虫文化賞短編賞受賞作
『生理ちゃん』の作者は男性作家なので、現在は、旧来秘されて(ごまかされて)いた男性・女性の関係・心理が刷新されていく時代なのではないかと思います。見るとイライラしてしまってあまり好きでなかったタレント・西野未姫がAbemaTV『チャンスの時間』でまじめに(ときおり茶化していましたが)生理の講義をしていて、彼女にはじめて感心しました。いい年こいた男は少女マンガをまじめに読むべきです。まずは吉田秋生
『櫻の園』か
『河よりも長くゆるやかに』あたりを入門編としていかがでしょうか。
オンナ篇3位『あした死ぬには、』雁須磨子(太田出版) 雁須磨子は同人誌のころから好きな絵柄だったのでこちらも寿ぎたいです。絵は昔のほうが生々しくて惹かれるのですが、昔からタイトルが上手いです。『いちごがすきでも赤ならとまれ。』とか『つなぐと星座になるように』とか『私の嫌いなおともだち』とか。
この1&3位はどちらもジェンダーを表、欲望を裏テーマとしています。今年は『全裸監督』がはやりましたが、実はこちらのテーマは裏表が逆になっていますが、通底しているのです。
もし古書店で詩人・伊藤比呂美と村西AVのアイコンでもある女優・黒木香の対談本
『性の構造』を見かけたら、ぜひ読んでください。名著です。
オンナ篇は1位以外(10位中)、派手さに頼っていない秀作が意外と多かったです。萩尾先生(すみませんここだけ先生にさせてください)
『ポーの一族 ユニコーン』といった企画自体がすでに派手な作品もありますが。7位
『てだれもんら』中野シズカは、杉浦日向子を彷彿とさせるベタの上手い画風の作品でした。未購入のものもすこしあって、8位『裸一貫! つづ井さん』つづ井、9位『ゆりあ先生の赤い糸』入江喜和の2作品が読めていませんでした。