──監督や音響監督からは、どのようなディレィションがありましたか?鈴木 ヤコブについては初期段階でキャラクターの構築が出来ていましたので、ちょっとしたリテイクがあったぐらいですね。シャルロッテの方が細かいディレクションが多かったと思います。どこから狂気を纏うかとか、不穏な空気が出てくるのかといった案配を丁寧に詰めていましたので、大変そうだなって思いながら見ていました。
──本編に登場するヤコブを、別人のモブとして演じてみていかがでしたか?鈴木 最初は全然違う別人として演じるべきか迷ったりもしたんです。でもあくまでシャルロッテの妄想の世界である本編に登場するということでしたので、ヤコブのまま演じさせてもらいました。ただ「何か意味がありそうな雰囲気を出してほしい」というリクエストもあったので、ただのモブにならないように演じるのが難しかったです。
──主役級とクレジットされながら、その役をモブとしても演じることは、なかなかない経験では?鈴木 そうなんですよ(笑)。おかげで本編の収録に顔を出すたびに、他のキャストの方々に「なんでお前モブやってんだよ」って、ツッコまれることがパターンになってまして(笑)。そんな風に弄られるたびに「僕らメインでもちゃんとやっていまして……」と説明を毎回するのが大変でしたね。ちょっと面倒くさかったです(笑)
──完成映像をご覧になっての感想をお聞かせください。鈴木 キャラクター原案がCLAMPの皆さん、オリジナル脚本が横手美智子さん、音楽はあの宮川彬良さん、アニメ制作は「WIT STUDIO」ということで、とにかく豪華だなと思っていました。特に音楽なんて宮川先生自らタクトを振ってのフィルムスコアリングですからね。実際映像を見てみたら、人間の揺らぎみたいなものが劇伴にもしっかり乗っているのが体感できたりと、本当にすごいんですよ。他にもなかなか使われない撮影方法が盛り込まれていたりして、「作るのが大変だったろうな」って思っていました。作り手が楽しみながら作っているのが伝わってくる野心的なフィルムになっていますので、ぜひ期待しつつ見てもらえたらと思います。
──全6話のうち、鈴木さんお気に入りの話は?鈴木 4話目のエピソード「小人の靴屋」ですね。とにかく話そのものが本当に面白いんですよ。演劇チックな舞台設定の物語をアニメで見せるというところも個人的にはすごく刺さりましたし、主人公のN氏を演じる東地宏樹さんのお芝居の構築の仕方がすごい僕好みで。「この役やりたかった!」って悔しく思っちゃったぐらいにうらやましかったです。
──最後にファンの皆さんにメッセージを。鈴木 この「グリム組曲」ですが、絵、音、お芝居全てに対して野心的な試みと細かいこだわりが詰まりに詰まった作品になっています。各話毎にグリム兄弟が見たら怒るんじゃないかって思ってしまうぐらいに破天荒で面白い、摩訶不思議な世界観の物語が展開されていきますので、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
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