• 【機動戦士ガンダムSEED DESTINY】「自由の代償」がもたらす平和と正義への疑問
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2023.11.17

【機動戦士ガンダムSEED DESTINY】「自由の代償」がもたらす平和と正義への疑問

(C)創通・サンライズ


しかし、キラやアスラン、ラクスやカガリたちはデュランダルやシンの提示する口当たりの良い「シンプルな平和」を受け入れることはできなかった。誰かから与えられるだけの、個人の自由を奪われた上で成立する平和は、真の平和と言えるのか。最終決戦の場となるザフトの機動要塞「メサイア」内でキラとデュランダルは銃を向け合い、お互いの思いをぶつけ合うことになる。

一方、シンの仲間であり強い友情で結ばれたレイ・ザ・バレルの存在も、本作のクライマックスに大きな意味を持ってくる。レイの正体は、ラウ・ル・クルーゼと同じくムウ・ラ・フラガの父、アル・ダ・フラガのクローン実験体だった。クルーゼの亡き後、彼の親友であったデュランダルに預けられ育てられたレイにとって、デュランダルは父の代わりであり、自分を導いてくれる絶対的な存在だった。それゆえに、レイはデュランダルの命令に絶対服従を貫いてきた。
しかし、デスティニープランが提示する「自由なき未来」は本当に自分の望んだものだったのか……キラとデュランダルの対話の中で、彼の心は大きく揺れていく。

もう一人、「自由なき未来」を選んだ者として本作で強い印象を残すのは、ラクスの替え玉として活動したミーア・キャンベルだ。ラクスの復活と共にその存在を疎んじられるようになってしまった彼女は、ラクス暗殺のための手駒として扱われてしまう。
自分の価値は、もはや押し付けられたラクス・クラインの仮面を被り続けることでしか成立しないことに気づいたミーア。自由を捨て、デュランダルの意のままに憧れのスターとして生きた日々は彼女にある種の豊かさをもたらした後、孤独で残酷な末路へと導くことになる。これもまた、デュランダルの目指す「平和」の一面を現しているのだ。

それぞれの思いを壮絶なMSバトルに重ねて、本作のストーリーはクライマックスを迎えることに。その結末はぜひ劇場のスクリーンで確認してもらいたが、あえて言うならばその後味は決して爽快なものではない。現実の戦争が決してなくならないように、「ガンダムSEED」の戦争の火種も簡単に消せるものではないからだ。
しかし、大事なことはその状況をただ受け入れるのではなく、自分が何をできるかを考え、行動していくことではないか。決められた「運命」と選択する「自由」の激突――本作で活躍したガンダムの名称には、本作スタッフのそんな思いが込められていたのではないだろうか。

本作で幕を下ろす『SEED DESTINY』を経て、彼らの物語は続く完全新作映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』へと引き継がれていく。長き時を経て私たちが再会するキラ、アスラン、シン、ラクス、カガリたちの前には、果たしてどんなドラマが待ち受けるのか? 改めて『自由の代償』を観直すことで、その新たな戦いに備えてほしい。

>>>熱いクライマックスを見逃すな!『自由の代償』場面カットを見る(写真17点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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