• 劇場版『コブラ』出﨑統×松崎しげるが醸す「大人のアニメ」感を味わう【日曜アニメ劇場】
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2023.08.11

劇場版『コブラ』出﨑統×松崎しげるが醸す「大人のアニメ」感を味わう【日曜アニメ劇場】

(C)BUICHI TERASAWA/ART TEKNIKA・TMS

8月13日(日)19時よりBS12トゥエルビ〈日曜アニメ劇場〉にて放送されるのは劇場版『スペースアドベンチャー コブラ』。
アニメ界の巨匠・出﨑統が多彩なイメージを取り入れて作り上げた “大人のスペースオペラ” の世界と、主人公・コブラを演じた松崎しげるが醸し出す軽妙洒脱な味わいが魅力的だ。

左腕に仕込まれた【サイコガン】を武器に、愛機タートル号を駆り相棒のアーマロイド・レディととも冒険の旅を続ける宇宙海賊ーーそれが永遠不滅のアウトローヒーロー「コブラ」だ。
本作は、漫画家・寺沢武一が1978年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載開始したコミックを原作にした、1982年7月公開の劇場アニメーション。公開当時は「日本アニメ初の4チャンネルドルビーサラウンド導入」「立体3‐D方式上映」を大きく謳って衆目を集めた作品でもある。
主役・コブラを演じるのは、主題歌「DAYDREAM ROMANCE」も担当した歌手・松崎しげる。他キャストにも中村晃子、風吹ジュンといった実力派の俳優陣を配したことで話題を呼んだ。

内容に関しては、『ガンバの冒険』、『あしたのジョー』、『エースをねらえ!』など幾多の名作でアニメ界に確かな足跡を遺した出﨑統監督とその盟友であるアニメーター(本作ではキャラクターデザイン・作画監督を担当)杉野昭夫とのコンビが、原作の持ち味である自由奔放で荒唐無稽な想像力を楽しめる壮大なスペースオペラ作品に仕立て上げた。
なお、同年10月からは、同じく出﨑・杉野コンビが参加したTVシリーズ『スペースコブラ』(出﨑監督は竹内啓雄と連名でチーフディテクターを担当)も放送されている。

寺沢も脚本に参加したストーリーは、原作の「刺青の女」「黄金の扉」の2エピソードをベースにしたオリジナルの展開を楽しめる。
とある星の酒場で出会った賞金稼ぎの女・ジェーンから用心棒を依頼されたコブラ。
彼女の目的は、3つ子の姉妹キャサリンとドミニクを探すことだった。
しかし、ジェーンは巨大犯罪シンジケートの海賊ギルドに狙われており、ギルドの幹部でコブラとも因縁を持つクリスタル・ボーイが二人に襲いかかる。
ジェーンはなぜギルドに狙われているのか? 実は彼女とその姉妹たちは、銀河の行方を左右する大きな秘密を抱えていた……。


本作で特筆すべきは、出﨑監督が卓越したビジュアルセンスで『コブラ』の世界に多彩な映像のイメージを導入している点だ。
映画全体は『スター・ウォーズ(エピソード4/新たなる希望)』(1977年)、『同 帝国の逆襲』(1980年)にインスパイアされた雰囲気が色濃いが、OP映像のサイケデリックなムードは『007』シリーズのタイトルバックを彷彿とさせ、セクシーな女性キャラやポップでキッチュなビジュアルは、ジェーン・フォンダ主演のSF映画『バーバレラ』(1968年)の影響も感じられる。

こうしたイメージ引用は原作でも印象が強いが、出﨑監督はそれらを巧みに組み合わせながら独自にアレンジし、アニメーションという手法に落とし込むことで、より華やかな映像を作り出している。
また「エモーショナルな熱気をあえて抑えてクールに表現する」という出﨑監督特有の演出によって、本作では3姉妹の悲劇的なドラマがウェットになりすぎず、ドライで爽快な “大人の娯楽作品” として楽しむことができるのだ。

そして、本作のドライさを強く打ち出している点においては、コブラを演じた松崎しげるの “声” の力も見逃せない。
松崎の個性的なハスキーボイスと軽妙な演技が、広大な宇宙を自由に、タフに駆け巡るコブラという男の存在感を確かなものにし、映画全体の爽快さに大きく寄与している。
公開当時は賛否があったが、時を経た今、改めて今回の放送を観ればその魅力がきっと確認できるはずだ。

>>>粋でクールなコブラがカッコいい!『スペースアドベンチャー コブラ』場面カットを見る(写真6点)

*出﨑の「﨑」は、本作クレジットでは「崎」と表記されている
(C)BUICHI TERASAWA/ART TEKNIKA・TMS

アニメージュプラス編集部

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