• 『ヴイナス戦記』HDリマスターで味わう安彦良和アニメの魅力【日曜アニメ劇場】
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2023.07.28

『ヴイナス戦記』HDリマスターで味わう安彦良和アニメの魅力【日曜アニメ劇場】

(C)1989 学研・松竹・バンダイ

7月30日(日)19時より、BS12トゥエルビ〈日曜アニメ劇場〉にて『ヴイナス戦記』(1989)が放送される。
本作は『機動戦士ガンダム』のアニメーションディレクター/キャラクターデザインとして知られる安彦良和が、自身の漫画を原作にして監督を手掛けた劇場アニメーション作品。長らく振り返る機会を与えられなかった本作を、
鮮やかなHDリマスターの映像で楽しめる絶好の機会となりそうだ。

人類が移住を開始してから70年以上が経った西暦2089年の金星=ヴイナス。地表の温暖化による環境の悪化が進む中、ヴイナスの勢力を二分する自治州・アフロディアとイシュタルは終わりの見えない戦争状態にあった。
閉塞感に包まれるその星で、生きる目的を見いだすことができない若者たちは、悩みや憤りや苛立ちを危険なバイクレース「ローリング・ゲーム」にぶつけていた。
ローリング・ゲームに熱中する若者のひとりであるヒロキ・セノオ(ヒロ)は、突如街を制圧したイシュタル軍の侵攻に対し、バイクチームの仲間たちと共に戦いを挑む。それをきっかけにヒロはアフロディア軍の戦闘バイク部隊・HOUNDと出会い、本物の “戦場” へと向かうことになる……。

未来の金星での戦争を背景に激しい戦闘が描かれる本作だが、物語の主軸となるのは戦争に翻弄された若者たちの怒りや葛藤だ。時に刹那的な衝動に身を任せつつも、未来を拓くために必死にもがく若者たちの生き様を描く青春群像劇は、動乱の世に翻弄されながら自分の生き方を模索する若者を描く安彦の漫画作品『虹色のトロツキー』『王道の狗』『天の血脈』などに通じるテーマを持った作品だと言えるだろう。

アニメーション映画としての注目点は、やはりその圧倒的な「手描き作画の魅力」だ。
作画監督・神村幸子(『シティーハンター』キャラクターデザインなど)や、作画監督補として名を連ねた川元利浩(『カウボーイビバップ』キャラクターデザイン)、仲盛文(『機動戦士ガンダムUC』、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』などの作画で活躍)ほか作画スタッフが手がけたキャラクターの繊細な表情芝居やなめらかな身体の動き、独特の色気を感じさせる描線は、安彦監督の絵柄の特徴・魅力を見事に画面に落とし込んでいる。

また小林誠・横山宏によるアニメオリジナルのメカデザイン、そしてメカニック作画監督・佐野浩敏(『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』など)を中心にして存分に描かれるメカアクションも、全編に渡って大きな見どころだ。
強大な火力で圧倒するイシュタル軍の重戦車・通称「タコ」と、スピードで翻弄する主人公たちの戦闘用一輪バイク「モノバイ」との激突は、その迫力もスピード感も、手描きアクションの最高峰のひとつと言っても過言ではないだろう。

『クラッシャージョウ』(83年)、『アリオン』(86年)に続く安彦監督の劇場アニメーション第3作となった『ヴイナス戦記』だが、本作の興行的不振をきっかけに安彦監督はアニメ制作の仕事から離れ、2015年に『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』の総監督として現場復帰するまで26年の時を待たなければならなかった。
本作もまた、国内で長らくソフト化されず幻の作品として扱われていたが、その真の価値は今だからこそ確認できるのかもしれない。

今回の放送は、2019年のBlu-ray発売にともない実施されたHDリマスター版の映像がTV放送で初めて使用されることも大きな見どころのひとつだ。戦場で繰り広げられる青春ドラマ、そして時代を超える手描きアニメーションの魅力をハイクオリティの映像でぜひ堪能してほしい。

>>>安彦良和の魅力に酔う!『ヴイナス戦記』場面カットを見る(写真19点)

(C)1989 学研・松竹・バンダイ

アニメージュプラス編集部

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