若い男子のみが罹る奇病 “赤面疱瘡” のまん延により男女の立場が逆転した江戸時代を舞台に描かれる、よしながふみの傑作コミック「大奥」が初のアニメ化、現在全10話がNetflixにて世界独占配信中だ。
本作の監督を手掛けたのは、『アルスラーン戦記』『幽☆遊☆白☆書』『BORUTO-ボルト-』など、数々の人気アニメを手がけた阿部記之。壮大な原作の世界といかに向かい合ったのか、話をうかがった。――まず、阿部監督が『大奥』を手掛けることになった経緯からお聞かせいただけますか。阿部 (制作スタジオである)スタジオディーンさんからのご依頼でした。この前にディーンさんで時代劇を1作手掛けていまして(『胡蝶綺 ~若き信長~』)、その流れで齋藤(隆行)プロデューサーにお声がけしていただいたんじゃないかと思います。まず「これは大変やりがいのある作品が来たなぁ」と(笑)。
――原作はSF時代劇というカテゴリーの中で濃厚な人間ドラマが描かれていきますが、監督の印象はいかがでしたか。阿部 おっしゃるとおりSFという形を取りながらも「女性がずっと頑張って、時代を繋いできたのだ」という、よしながふみ先生ならではのメッセージが強く打ち出されていて、今の時代の空気にもピッタリの内容だな、と感じました。
――『大奥』はこれまでにも映画・ドラマと実写の形で映像化されてきていますが、アニメ作品としてどういうところに力を入れようと意識されましたか。阿部 まずは作品の柱であるコロナ禍に通じる疫病の描写やジェンダー問題、あと先ほどおっしゃっていた人間ドラマをしっかり丁寧に描いていく、ということに注力しました。こちらの知識にも限界がありますし、言葉ひとつにも気配りをしないといけないわけですから、そこは原作を大事に追いかけました。
映像的な面でいうと、時代劇ということもあって背景はリアル志向で進めました。当初は、よしなが先生のキャラとアニメーションの相性が良いかどうかが不安で、キャラデザインをもう少しリアル目に寄せるかという考えも頭をかすめましたが、実際に載せてみたら良い意味でキャラが浮いて見えたので、これは正解だったかなと。
そして本作の大きな見どころは大奥の豪華絢爛ぶりなので、着物のテクスチャーの貼り込みなんかはしっかりやりましたね。そもそもの作業が大変なんですが、「ここまで凝るのは信じられない」というレベルまでスタッフは頑張ってくれました。まあ『大奥』という作品が求めているからしかたない、と諦めてくれたのかもしれませんが(苦笑)、ぜひ見てほしいですね。
あとは、影つけの方向性でしょうか。日本家屋の中では常に光が横から入って来るので、それを意識しながらの作画や処理を、ディーンのスタッフが頑張ってくれました。
Netflixシリーズ「大奥」独占配信中