• 「必殺シリーズ」深掘りインタビュー集の著者が語る作品愛と執筆裏話
  • 「必殺シリーズ」深掘りインタビュー集の著者が語る作品愛と執筆裏話
2023.04.27

「必殺シリーズ」深掘りインタビュー集の著者が語る作品愛と執筆裏話

『必殺シリーズ異聞 27人の回想録』(立東舎)


――様々な秘話が掲載されていると思いますが、高鳥さんが特に驚かされたエピソードは?

「驚きとは違うかもしれませんが、やっぱり今回も視点が変わることによる評価の差や証言の食い違いがあって、そこは前回よりも大きいかもしれません。具体的に言うとネタバレになってしまうので控えますが、ぜひミステリ的に夢工場の裏側を味わっていただければと思います」

――前著と比べて、本書での作業の印象はいかがでしたか。

「フォーマットが固まっていたので、その部分は楽でした。ページ数もほぼぴったり収まりましたし。今だから言えますが、前著は『よくこのスケジュールで出せたなぁ』というハードなもので、著者も担当編集もちょっと数学が苦手なのでテキストを流し込んだら100ページ以上オーバーという大変な悲劇に見舞われてしまい……。なんとか32ページ増やして384ページになったのですが、それでも泣きの涙の作業でした。

しかし余裕があったはずの今回も最後はドタバタで、反省点は多いですね。予算に続いてスケジュール……やっぱり必殺シリーズの呪縛でしょうか」

――発売初日に山﨑努さんが「なつかしく、おもしろく読みました」とTwitterで発信されていました。著者冥利に尽きるのではないでしょうか。

「びっくりしました。前著『必殺シリーズ秘史』でインタビューさせていただいた縁もあり、また今回は鉄・錠・主水の仕置人3ショットが表紙なのでお送りしたのですが、まさか初日に、しかも『必殺仕置人』第1話の放映から50周年の日にコメントをいただけるとは。
山﨑さんがTwitterを始める際に、ひとつだけ決めたルールが “嘘は書かない” ということだったんです。勿論リップサービスをされるような方ではないので、本当におもしろく読んでくださったのだと思います。読書家としての著書もあり、また文筆業の先輩でもあるので、励みになりました。

スクリプターの野口多喜子さんに向けて「ハロー!元気そうで何より!僕も元気だよ」とツイートされていたので、そのことを電話で野口さんにお伝えしたらよろこんでおられました。前回も今回も、拙著をきっかけに交流が復活した関係者の方々がいて、それは素直によかったなぁと思っています。みなさん本当にお元気だし、忖度も遠慮もないし、今回は90歳前後の方々の取材が何人もおられました」

――貴重なエピソードを聞き出すインタビューの秘訣はありますか?

「うーん、特にないです。関西の方が多いので、みなさん自由にポンポン喋ってくれますし、こんなに無口なインタビュアーも少ないと思います。お仕着せの取材ではなく『この人に話を聞きたい!』という主体性があるので、それが伝わっているのではないでしょうか。何やらスピリチュアルめいた話になってしまいますが……。

あと今回は石原興さんをはじめ京都映画のスタッフ座談会を3組行ったのですが、これはもう本当に楽で、6時間ずーっと喋りっぱなしの例もありました。その代わり、まとめるのは大変でしたが」

――本書での取材を通して「必殺シリーズ」の新たな、またはさらに深い魅力を見つけることはできましたか。できましたら、具体的にお答えください。

「映画界の古い格言に『一スジ、二ヌケ、三ドウサ』というものがありますが、あらためてスジ=ストーリーの大切さですね。必殺シリーズは撮影現場でシナリオが改訂されることも多く、ともすれば脚本軽視の風潮があるのですが、やはり池波正太郎さんの原作をもとにした『必殺仕掛人』から始まって、キャラクターやストーリーのおもしろさが抜群です。土台がしっかりしてないと、光と影の映像や俳優陣の演技も浮いてしまうのだと実感しました。
ちょうど映画の『仕掛人・藤枝梅安』二部作が公開されましたし、6月からは名画座のラピュタ阿佐ヶ谷で『必殺シリーズ』の特集上映もあるので、また盛り上がればいいなと思います」

――もし今後「必殺シリーズ」のさらなる続刊があるとすれば、どんなテーマで挑みたいですか。

「今回の本は『必殺仕置人』を中心に第14弾のオカルト時代劇『翔べ!必殺うらごろし』で区切っているので、その次の作品、『必殺仕事人』以降の関係者に話をうかがえればと思っています。やはり必殺=仕事人というのが世間のイメージなので、そこに目を背けてはいけない。いわゆる “仕事人ブーム” は80年代で、まだ健在の関係者も多いですし。

また、一ファンとして他の必殺本も読んでみたい気持ちがあります。かつて洋泉社時代の映画秘宝ムックに『必殺仕置人研究読本』という企画がありましたが版元の解散で幻になったままですし、それこそ俳優インタビュー集やシナリオ集も読んでみたい。あとは『必殺50年のあゆみ』みたいな総まとめ本が出れば拙著の10倍くらい売れるのではないでしょうか」

――では最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

「前回同様、著者の言い分は秘めて読者それぞれの受け止め方に委ねたいと思います。テレ東の木曜洋画劇場の『あなたのハートには、なにが残りましたか?』ってやつですね。あれに毎週、感銘を受けていたので。現実的な話をすると、『仕掛人』の次に『仕置人』が始まって必殺シリーズが続いたように、パート2のジンクスを打ち破ることができればと思います。そうすれば、いろんな出版社から必殺本が出るかもしれませんし、アニメや特撮のような豊穣さを願いたいです。

それこそ最初の著者インタビューが映画ジャーナリズムやサブカル系の媒体ではなく、またアニメージュプラスというのも奇遇ですよね。『あぁ、帰ってきたんだなぁ』と、まるで船乗りのような気持ちです。うちの実家は廻船業だったので」

高鳥都(たかとり・みやこ)
1980年生まれ。2010年よりライターとしての活動をスタートし、『映画秘宝』『昭和の謎99』『昭和の不思議101』などに執筆。著書に『必殺シリーズ秘史 50年目の告白録』、編著に『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』があり、『漫画+映画!』『完全版アナーキー日本映画史1959-2016』ほか共著多数。

>>>「必殺シリーズ」秘蔵の美術資料、『必殺シリーズ異聞』の内容を見る(写真10点)

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事