• 『ガメラ3 邪神覚醒』が孕んだ『エヴァ』と共鳴する世紀末の空気【日曜アニメ劇場】
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2023.03.04

『ガメラ3 邪神覚醒』が孕んだ『エヴァ』と共鳴する世紀末の空気【日曜アニメ劇場】

(C)KADOKAWA 徳間書店 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 日販/1999


まず大きな衝撃を受けるのは、映画序盤で描かれる渋谷のカタストロフィ場面だ。
ガメラとギャオスの戦いに巻き込まれ、逃げ惑い、焼かれ、押しつぶされる多数の人々。その描写は情け容赦なく、目を背けたくなるほど凄惨だ。巨大な怪獣が街中で暴れたらどうなるのか? まさしく災害としてのリアルを徹底的に突き詰めた、究極の映像がここにある。

さらに映画の終盤を飾る、京都駅を舞台にガメラとイリスが激闘を繰り広げるクライマックスも必見だ。
緻密なミニチュアワークで作り上げられた京都駅、しかも1997年に完成したばかりの新駅舎(京都駅ビル)が二大怪獣に無惨にも破壊されていく様子には、特撮映画ならではの圧倒的なカタルシスとともに身近な恐怖をも感じられるはずだ。

怪獣映画としての見どころが強化される一方、本作ではシリーズのSF・疑似歴史的な物語の背景もさらに深められている。ガメラとギャオスの密接な関係、イリスと綾奈の間で結ばれた精神世界的な描写、人類の文明からさらに遡る超歴史な視点も導入されたことで、本作は全体を通してミステリアスな雰囲気をまとっている。
徹底的にこだわりぬいた映像演出、神話的な語り口――そうした特徴から本作が公開時に『新世紀エヴァンゲリオン』の “兄弟作” 的な受け取り方をされていたことを覚えている方も多いのではないだろうか。

生物と人工物の中間的質感を持つイリスの存在感は『エヴァンゲリオン』の使徒のようでもあり、綾奈のキャラクターもどことなく綾波レイを彷彿させる。樋口真嗣特技監督が『エヴァンゲリオン』にスタッフとして参加していること、また特撮現場サイドから見た本作のメイキングドキュメンタリー『GAMERA1999』で庵野秀明が総監督を務めているなど、裏側から見た〈平成ガメラ〉と〈エヴァ〉の関係が密接であることを理解できるかもしれない。

だが、そうした側面を差し引いても、『ガメラ3』と『エヴァンゲリオン』には共通するものを感じさせる部分が確かにある。謎に満ちた世界観、圧倒的な映像、日常と非日常の混在、どこか厭世的な視点、そしてナイーブな心理描写――両作品には20世紀末の日本に漂っていた、何か不安定で不穏な空気がそのまま満たされているように感じられるのだ。
今回の放送を観る際には、作品全体に漂うそんなムードにもぜひ注目してほしい。

怪獣映画というジャンルに新風を送り、特撮ファンに永遠に愛され続ける〈平成ガメラ〉三部作。そのラストを締めくくる衝撃の問題作をお見逃しなく。

>>>さらに進化したガメラの勇姿に注目!『ガメラ3』名場面を見る(写真7点)

(C)KADOKAWA 徳間書店 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 日販/1999

アニメージュプラス編集部

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