• 神谷浩史と久米田康治。最強タッグが生む、明日への糧
  • 神谷浩史と久米田康治。最強タッグが生む、明日への糧
2021.07.08

神谷浩史と久米田康治。最強タッグが生む、明日への糧

後藤可久士役で出演する神谷浩史さん 写真/大山雅夫


――神谷さんご自身が感じる久米田作品の魅力はどんなところでしょうか?

神谷 とにかく情報量が多いというのが一つの魅力かな。ストーリーラインとしてはシンプルなんだけど、そこに対する小ネタだったりというものの情報量が多いんですよ! 『絶望先生』の時は特に思っていましたが、よくこんなものを週刊ペースでやってるなっていう感じでしたし……。後は、何と言っても久米田先生の引く線ですね。キャラクターに隙がないんです。

――線ですか。

神谷 キャラクターって記号なので、線が少ないほうが伝わりやすいんですが、久米田先生の引く線はとてもシンプルでソリッドなんです。本当に必要最低限の線でキャラクターが作り上げられていて、引き算でキャラクターを作っていっているんだと思います。これが足し算だったら、ビジュアル的には綺麗になっていくと思いますが、伝わりにくくなっていくと思うんです。でもそういったところをおそらく引き算で、必要最低限のとてもシンプルな線で描いていて。これは、漫画という紙の上で何かを表現するにあたって、万人に対して伝わりやすい表現だと思うんです。そういった意味では、キャラクターもお話もとてもシンプルなのに、情報量が非常に多い漫画という、ギャップがあるんですよね。とても可愛らしいキャラクターだけど、言ってることに毒が多かったりもしますし……。何にしろ、毒があっても、それがあまり毒っぽく見えない。普通に読んだら普通の漫画だけど、毒の裏の意味を考え始めると、よくここまで計算して漫画を描いてるなっていう、そういう情報量の多さですよね。『かくしごと』も、親子が幸せに平凡に暮らしている日常系漫画の体裁をとりつつ、実は下ネタ漫画家だということを娘に隠す主人公がいて。そして、実際それが久米田先生自身と重なるから、より複雑な構造になってるんですよね。本当に久米田作品の魅力っていうのは挙げ出したらキリがないですが、そういうシンプルさと複雑さが同居してるところが魅力なんじゃないでしょうか。

――ありがとうございます。アフレコについても少しお伺いしたいのですが、姫役の高橋李依さんとのシーンが多かったかと思いますが、TVシリーズを通してやり取りで印象的だったことはありますか?

神谷 高橋さん自身、10歳の女の子を演じるということに対して、とても悩んでいたところがあったんです。どういう風にやったらこの姫というキャラクターを、原作の雰囲気をそのままに音にできるのかというのは、この作品においては一番大切にしなきゃいけない部分だと思うんですよね。姫っていう10歳の小さい女の子が一生懸命頑張ってるからこそ、観ている人の気持ちを動かすのだと思うので。でも、その頑張り方があざとくなればなるほど伝わりにくくなっちゃうので、どうやったらあざとくならずに素直に姫の魅力を伝えられるかっていうところは、高橋さん的に課題だったみたいで。そういうところを表現するにあたって、悩んでいたのは非常に印象的でしたね。

――神谷さんご自身は、可久士のように毒を吐いたりする、ちょっと棘のあるキャラクターを演じる上で気を付けていることはありますか?

神谷 リアルにやったら嫌な人になっちゃうので、そこをコメディ・ギャグとして笑えるものにしていくにあたっては、それぞれの役者さんの技量に、ある程度任されてるんじゃないかなと思っています。何にせよ、僕はどのキャラクターを任せていただいてる時もそうなんですが、なるべく嫌われないようにしたいなって思っているので(笑)。当然、可久士もそういうつもりでアプローチしていました。

(C)久米田康治・講談社/劇場編集版かくしごと製作委員会

アニメージュプラス編集部/写真:大山雅夫

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