• 入江泰浩監督が新作『エデン』で描き出す3DCGの世界とは?
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2021.05.27

入江泰浩監督が新作『エデン』で描き出す3DCGの世界とは?

『エデン』入江泰浩監督


3DCGへの挑戦

ーー今作はフル3DCGのアニメーションです。入江監督はフル3DCGの作品を監督なさるのははじめてですね。

入江 公式に発表される形でのフル3DCG作品ははじめてですが、実は2006年にボンズで短編のフル3DCGアニメーションを作っています。ただ、それは一般に発表はされていないし、多くのスタッフと作ったのではなく、あくまで私個人が3DCGのソフトを使って作ったものなので。つまり、自分としては3DCGアニメを作るのははじめてではないのですが、スタジオワークとしての3DCGは今回がはじめてのチャレンジになりますし、それが過去に自分が経験してきた手描きのアニメーションの監督と同じにできるのかどうかは、フタを開けてみるまでわからないというのはありましたね。ただ、制作会社自体はCGCGという台湾の会社で、ジャスティンが以前『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』で一緒に仕事をしており、高い技術力を持っていると太鼓判を押してくれましたので、そういう意味での不安はありませんでした。

ーー今作ではどんな画面や映像を目指そうとしていたのでしょうか。

入江 画面・映像に関しては、基本的には自分が今までやってきた手描きアニメの手法をそのまま使おうと思っていました。「3DCGだからこうしよう」というのではなく、20分のTVフォーマットのアニメーション作品をどう盛り上げるか、どういう風にカットを割るか、どんなアクションをつけるか、そういうことは自分が手描きアニメーションで経験し、培ってきたことをそのままCGCGに提示する。そして、3DCGとして実現してもらうという感じでした。自分の経験が最大限に発揮できるのも、いちばん明確に指示を出せるのも、手描きの手法だと思いましたので、スタンスとしては同じやり方を選んだというのはあります。

ーーご自身が経験、蓄積してきた手描きアニメの手法を、3DCGに応用するという視点があったということでしょうか。

入江 そうですね。アクションや表情、感情芝居を3DCGで表現した時に、こちらの意図通りのものができるかというのは、ひとつのチャレンジではありました。そして結果的に、こちらの意図通りになった部分もあれば、意図以上のものを表現してくれたと感じる部分もありました。

ーー意図以上になったのは、どういったところでしたか。

入江 たとえば、第1話の制作時に「こういう風にしてほしい」と提示し、それが実現します。そして第2話の制作で同じようなシチュエーションがあると、第1話の時の指示がクリアされた状態からラフのアニメーションがスタートするんです。結果、「最初からこうなっているなら、さらにここまでいけるかな」と話数を経るごとに蓄積されていき、より高い水準へとつながっていく。通常であればここまでクリアできれば御の字、演出意図として成立する。でも、その蓄積のおかげで、もう少し先まで要求することが可能になり、意図以上のものになったというのはありますね。具体的に言うならば、演出意図としてはキャラクターが普通に立ち上がってくれればOK。でも第2話からは最初から普通に立ち上がっているので、立ち上がる時により疲れた感じであるとか、ウキウキした感じであるとか、ニュアンスを追加できる。あるいは、他の「ここの表現はこのくらいでいいかな」と思っていた部分に対する指示に、こちらも時間を使うことができる。つまり、話数を経るごとにある水準以上の表現が、どんどんできるようになる。そういうことがありました。

ーー3DCGは当然、デジタルデータでの作業になりますから、ひとつの作品のなかでの蓄積がされやすいんですね。

入江 今回のシリーズはたった4話しかないのですが、その中でもすごい勢いで蓄積され、反映されていきました。いったん指示したことは、次からはこちらが言わずとも最初から提示し、表現してくれるようになっていくのが感じられましたし、だからこそ、それ以上のものが要求できるなとも思いました。


アニメージュプラス編集部

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