• 入江泰浩監督が新作『エデン』で描き出す3DCGの世界とは?
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2021.05.27

入江泰浩監督が新作『エデン』で描き出す3DCGの世界とは?

『エデン』入江泰浩監督


異なる種族の交流の物語

ーー本作の世界感やストーリーは、どのように生まれたのでしょうか。

入江 視聴者の方からするとまったく知らないオリジナルの物語ではあるのですが、私視点で言うと、ジャスティン・リーチ(プロデューサー)が書いた膨大なテキストがベースにありました。作品の方向性や世界観、物語の中でどういう歴史が流れているか、テキストの時点ですでに決まっていて、その中から「今回は(物語の)この瞬間をアニメにして作りたい」というところからスタートしています。つまり、ジャスティンが生み出した物語、世界観を実現させるというスタンスですね。

ーー今回は25分×4本のシリーズですが、その背景に膨大な世界が広がっているんですね。

入江 そうですね。今回の4本のシリーズ以前の、どうしてそういう世界の状況に至ったのかという部分や、それ以降に世界がどう動いていくのかということも含めて、ジャスティンの構想の中にあります。それが、本作の軸になっています。

ーー逆に言うと、同じ世界観でさらにシリーズを作ることも可能であると。

入江 そうだと思いますね。今回のシリーズ以降の物語も可能でしょうし、ここに至るまでの、ひょっとしたらロボットしか出てこないエピソードなども、十分実現可能だと思います。

ーー入江監督ご自身はその世界観に最初に触れた時や、作るにあたって踏み込んでいった時、どんな印象を抱かれましたか。

入江 とてもおもしろいなと思いました。というのは、こういう形の未来像やロボットと人間のコミュニケーションを描く作品を、自分は作ったことがなかったので。ある意味、新しいチャレンジになるなと思いました。ロボットと人間は、かたや機械、かたや生物。本来はコミュニケーションが成立しがたい、相容れないはずのものがコミュニケーションを取り、互いのことをどう受け取り、どう考えるのかという点が蓄積されていく。いってしまえば、異なる種族同士のコミュニケーションのはてに、どういう関係が生まれるのか。意志が通じないはずのもの同士が、いかに関係を築いていけるのか。そういうテーマが描けると思いました。また現実には、同じ種族、人間同士のあいだでもコミュニケーションが成立しにくい瞬間というのは多々あります。そういう問題と何か共通することが表現できるのではないかとも思いました。

ーーNetflixで世界に配信される作品のテーマとしても馴染みやすい気がします。

入江 「世界の人が観るという時に、どういう風に伝わるだろうか」というのは、作りながらつねに頭の片隅に感じていた部分です。そのために何か内容を変えるということはないのですが、たとえば自分では「これがいい」と思っていることが、異なる文化の国に伝わるだろうかーー親子関係であるとか、若者の「自分はこうしたい」という熱意であるとか、そういうものが違う文化圏ではこちらの意図した通りに伝わらない、こちらの意図とは違う受け取られ方をする可能性があるということは意識していましたね。まあ、それでも「きっと伝わるはずだ」と楽観視はしていましたけれど。

ーーそんな物語を担うヒロインのサラは、どういう女の子として描きたいと思いましたか。

入江 ロボットだけの世界の中にひとりだけの人間として放り込まれるという設定ですので。どういう風に動いていくかとイメージした時に、やはり自分から一歩踏み出す、前に進んでいくという女の子がいいかな、と。そういう積極的なキャラクターであってくれれば、この作品の中で活き活きと物語を引っ張ってくれると思いました。自分から困難に飛び込んでいってしまう、むしろ、うっかりと困難な道を選択してしまう。そういうキャラクターであればいいなと思いながら描いていきました。


アニメージュプラス編集部

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