第96回アカデミー賞授賞式が3月11日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビーシアターで開催され、宮﨑駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が長編アニメ映画賞を受賞した。スタジオジブリ作品が同賞を受賞するのは、2003年の第75回アカデミー賞での『千と千尋の神隠し』の受賞以来、21年ぶりとなる。前哨戦となるアニー賞でノミネート部門全制覇の高評価を得ていた『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』と競うこともあり、スタジオジブリでは、朝早くからスタッフたちが集まり、テレビを囲んで授賞式の結果を静かに、ソワソワとした様子で見守っていた。
いよいよアニメーション部門の発表となり『君たち』の映像が流れると、スタッフの間から思わず感動の声が漏れる。そして受賞がわかるやいなや、会場はその喜びを深くかみしめるように大きな拍手と歓声に包まれた。
受賞決定からまもなく、鈴木敏夫プロデューサーによる会見がスタート。
「頼めばオスカー像を追加で作ってもらえるので、僕と宮さんとスタジオの分、3つ頼んじゃいました」と喋りながら、鈴木プロデューサーはニコニコ顔で現れた。
アトリエにいる宮﨑監督と会見直前まで電話で話していたそうで「始まる前は『日本男児は嬉しい顔を見せちゃいけない』なんて言っていましたけど、さっき連絡したら心から喜んでいましたね」と宮﨑監督の様子を伝え、「僕が『おめでとうございます』と伝えたら『お互い様です』と。何でかといえば『二人で一緒にやったじゃないか』という意味なんですね」というやり取りから、46年に及ぶ二人の関係が伝わってくる。
海外での高評価については「僕は日本よりアメリカのお客さんがすんなり受け入れられるんじゃないかと思っていたんですよ。なぜかというと、内容がある種、旧約聖書の黙示録になっているからです。僕らが若い頃観たハリウッドの超大作は聖書をテーマにしたものが多くて、宮﨑にもそういうものの影響があったのではないか」と持論を語った。
アカデミー賞についての印象は「お客さんがいっぱい来ることと作品の内容、その2つを兼ね合わせて持っている作品が選ばれるということで、歴史をずっと見ていくとそこに非常に面白い選考基準があるんだなということがわかります。それともう1つ、スタッフの受賞枠が実に細かいところにまで及んでいて、歴史と伝統のある賞はやっぱりすごいなと思いますね」と語った。
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