• 『機動戦士ガンダムF91』新たなガンダムの「可能性」を指し示した異色作の魅力
  • 『機動戦士ガンダムF91』新たなガンダムの「可能性」を指し示した異色作の魅力
2023.12.22

『機動戦士ガンダムF91』新たなガンダムの「可能性」を指し示した異色作の魅力

(C)創通・サンライズ


「コスモ貴族主義」を掲げるクロスボーン・バンガード側の描写は、衣装やセリフ回し等も含めて歴史劇のような雰囲気を感じさせる。例えるなら『ガンダム』世界に『ベルサイユのばら』が紛れ込んだような、不思議な感覚を得られるはずだ。
また、腐敗した近代的政治組織とそれに対抗する貴族主義の集団という本作独自の対立図式は、人間同士の闘争のありようをどこか寓話的に表現しており、これまでの『ガンダム』シリーズにはない新しい手触りをもたらしていく。

その一方で、これまでの『ガンダム』らしい “リアル” の手触りもさらに鋭く追求されている。
まず超常的なイメージが強くなっていたニュータイプの概念を、シーブックは「パイロット特性がある人」と表現。その存在を批判的、現実的に捉え直そうとする意図が感じられる。

モビルスーツも、従来のものよりひとまわり小さい全長15メートル程度のサイズに設定。搭乗する人間との絡みや戦場での生身の人間との対比がより身近になったことで、戦闘で犠牲になる人々の描写が生々しさを増している(富野監督自身は当初、さらに小さな10メートル以下のサイズを考えていたという)。
爆発に巻き込まれ、落下物に下敷きにされ、コロニーから宇宙空間に放り出されて漂う犠牲者の描写はかなりショッキングだ。こんな “シビア” な描写も、本作の隠れたスパイスとなっている。

『逆襲のシャア』で大きな物語にひとつの決着をつけた富野監督が、同じ世界で新しい物語を要求された時に、何をどのように語ろうとしたのか? その回答こそが『F91』であり、後に続くかもしれなかったガンダムのひとつの「可能性」の種でもある。
富野由悠季、安彦良和、大河原邦男が今一度集い生み出した異色の「ガンダム」を、是非今回の放送で味わってほしい。


>>>ガンダム新時代を目指した意欲作『F91』場面カットを見る(写真19点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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