• 【PLUTO】浦沢直樹が太鼓判「遂に実現した理想的な形でのアニメ化です」
  • 【PLUTO】浦沢直樹が太鼓判「遂に実現した理想的な形でのアニメ化です」
2023.10.26

【PLUTO】浦沢直樹が太鼓判「遂に実現した理想的な形でのアニメ化です」

浦沢直樹×手塚治虫の名作『PLUTO』が遂にアニメ化、世界配信がスタート!


――脚本を監修するときに、どういったところを意識してチェックしていたのですか?

浦沢 例えば、ストーリー構成の部分ですね。尺が1時間あっても、まだ漫画のエピソードが入りきらない回もあるので、そこをどういうふうに再構成するかについて、僕も参加して相談させていただきました。「(漫画の)8巻が8話になる」という構成に関しては、間違いなく理想形なのですが、若干変えないと、どうしても入らない部分もあったんです。それが「改良」になるようにしたかったんですね。

――その点に関しては、思いどおりにいった手応えはありましたか?

浦沢 そうですね。Netflixさんでの配信だと、尺は多少フレキシブルに伸び縮みできますから、そこがすごく助かりました。

――今回Netflixで世界配信という形になりましたが、Netflixのような配信メディアは、連載執筆時にはまだ普及していなかったと思います。配信メディアについて、浦沢さんはどのように見ていますか?

浦沢 僕ら創作者たちがずっと「こういうのがあればいいのに」と願っていたメディアの形が、自然発生的に立ち上がってきているのかもしれないですね。
劇場へ出かけていって、大勢のお客さんが大画面で一緒に作品を観るという体験は、本当に素晴らしいと思うんです。あの体験は今後も廃れることなく、ずっと続いていってほしいんですけど、収益の面から「(上映を)一日に何回転させるか」という問題は意識せざるを得ない。一方で、その制約から外れなければ、自由な作品づくりができない側面もあって、そこで長年創作者たちが夢見ていた形が、メディアとして結実したような気がしています。

――アトム生誕20年に当たる今年に『PLUTO』のアニメが世に出ることについては、どのように感じていますか?

浦沢 2003年が手塚(治虫)先生の設定した「アトム生誕の年」だったんですが、その2003年に僕は「アトムの誕生は無理だな」と思いながら『PLUTO』を描き始めました。そこから20年経って、ひょっとしたら「アトム誕生、あるかもな」というところまで時代が追いついてきた。この進歩はすごいですよ。その「あるかもな」という時代に、いよいよこの作品が発表されるのは、巡り合わせのようなものを感じます。

――『PLUTO』は、イラク戦争など連載当時の世界情勢を色濃く反映した作品だと思います。それをアニメ化して2023年に発表するのは、時代性の解釈が難しいですよね。

浦沢 「今の時代にまだこの話が有効なのか」という点に関しては、少し複雑な思いもありまして。読み返してみると、セリフ一個一個を取り上げても、今だから逆にハッとするような発言がたくさんあるんですよ。「こういう世界がなくなりますように」という祈りを込めた作品でもあったのに、その祈りが今でも相変わらず有効なのかと。それどころか、ますます有効と思えるぐらいの世界情勢になっていて、それを考えると、本当に今こそこの作品を皆さんに観ていただきたいと大声で言いたいです。

――『PLUTO』の連載や今作の制作を通して、浦沢さんは「手塚治虫」という存在を改めてどのように感じていますか。

浦沢 誤解を受ける言葉かもしれないですが、手塚先生って、もしかしたら本質は結構マイナーな志向性で、それをもエンターテインメントにしようとした人という感じがするんですね。例えるなら、小劇場でかかるようなマイナーなお芝居を、ものすごく大きな劇場でかけるにはどうすればいいのか、それをずっと考えていた人じゃないかと。
その点はとても大事なことで、いきなり発想からしてマスに向けたものを目指すのではなく、表現したいものをどうやったら大勢に届けることができるのか。そういう考え方を我々は持っていなければいけないと、改めて教えられた気がします。

浦沢直樹 Naoki Urasawa
漫画家。1960年東京都生まれ。1983年『BETA!!』でデビュー。代表作に『YAWARA!』『Happy!』『MONSTER』『20世紀少年』など。現在、『あさドラ!』を「ビッグコミックスピリッツ」にて連載中。これまでに小学館漫画賞を三度受賞したほか、国内外での受賞歴多数。国内累計発行部数は1億2800万部を超え、世界各地で個展を巡回。ミュージシャンとしても精力的に活動している。

撮影/荒金大介

>>>浦沢直樹が唸った最高のアニメ化!『PLUTO』場面カットを見る(写真25点)

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事