「ディズニー×日本のアニメ」で花開く新たな未来【後編】――ディズニープラスのアニメーション責任者・八幡拓人氏「これまでになかった新たな出会いを提供したい」

――「AnimeJapan」のお話に戻りますが、ディズニープラスとして初めてブースを出展されましたね。

八幡　「ディズニープラスにはこんな作品があるんだ」、「ディズニープラスでも日本のアニメが観られるんだ」、ということをアニメファンの方々にお伝えしながら、今ラインナップしているタイトルを知っていただく良い機会になったと思っています。1月から見放題独占配信している『東京リベンジャーズ』聖夜決戦編 がちょうど先月最終話を迎えるところだったり、4月から『天国大魔境』という作品を見放題独占配信していたりと、直近のトピックスがいろいろとありました。

▲『東京リベンジャーズ』聖夜決戦編
ディズニープラスで世界見放題独占配信中（中国本土を除く）
（C）和久井健・講談社／アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会

▲『天国大魔境』
ディズニープラスにて世界見放題独占配信中（中国本土を除く）
（C）石黒正数・講談社／天国大魔境製作委員会

――『天国大魔境』は原作が石黒正数先生ということもあり人気のある作品で、これがちゃんと最後までアニメ化されるのか、というのはファンとしてはやはり結構気になるところだと思います。そういった部分に配信プラットフォームとしてどのように関わっていらっしゃいますか。

八幡　作品を世に送り出して、視聴者にそれがどう受け入れられるかわからない中で、作品を最後まで作り続けるかどうか決断するのは、作り手にとって最も難しいことだと思うんです。でも、私たちのようなパートナーが一緒に寄り添うことで、視聴者からの反響をタイムリーに共有できますし、より安定してものづくりに専念していただける場をご提供できると思っています。

――必ずしも製作委員会的なものにコミットしなくても、プラットフォームとしてその場を提供することで作品を下支えすることができる、という感じですか。

八幡　まさにそれが独占配信のメリットの1つでもあると思っています。この作品、このIPをどう盛り上げていくのかについて、真剣に考えるパートナーの1人だと思っているんですね。なので、ご一緒させていただいている作品全て、とても密接に意見交換をさせていただいています。どういう配信形態がいいか、どういう見せ方をするのがいいのか。そういったことを非常に近い距離でコミュニケーションさせていただいています。私たちは、プロジェクトの始まりから参加させていただいて、様々な情報を逐一共有しながら、未来を見据えて一緒にやっているところなので、この取り組みの仕方こそ私たちならではだと思いますね。

――いわゆるテレビアニメの作り方とは、関わっていく比重からしてかなり異なるということですか。

八幡　日本で制作していると、グローバルのオーディエンスが見たときに現地でどういう感想を抱かれているか、どういうリアクションを受けるのかということをダイレクトに想像しにくい部分があると思います。これに対して我々は、例えば「このエリアではこういう表現に対してこのように受け取られることが多い」ということをシナリオの段階から一緒にお話をできるので、この表現が正しく伝わるのか？　というような疑問や懸念に対して、意見交換しながら、多種多様なオーディエンスに共感いただけるものが作れていると思っています。また、逆に日本のクリエイターからは、そういう面で、ありがたいことに頼っていただいている部分が非常にあると思います。それは私自身、新しいものづくりの仕方だと感じているところですね。

――サービスの選択肢の1つとしてちゃんと入っていけるような形になるといいですよね。立ち上げからここまで激動の期間だったと思うんですが、この先、中長期の展望というか目標としては、どういったことをお考えでしょうか。

八幡　既に数年後を見据えてどういったラインナップを展開していくといいのかを常に考え続けています。実際に、時間がかかる大きな作品はすでに順次動き始めていたりもします。けれども、まず今は何をしたいかというと、ディズニープラスがアニメにしっかり取り組み始めている、ディズニープラスで日本のアニメも視聴できるということを、しっかりと定着させていきたいと思っています。そして、その先で、エッジの効いた作品、ディズニーだからこそ作れる作品をどんどん出していきたいとも思っているんですね。
皆さんが観たいと思うような面白い作品をしっかりと取り揃えて、アニメファンの方に受け入れていただく。ディズニープラスでしか観られない作品がこんなにある、入ってみて良かったと思ってもらえるような、私たち独自のものが来年以降どんどん増えていけば、非常に充実したサービスだと感じていただけるのではないかと思っています。
まずは最初のステップとして今年は重要な年であり、来年以降はもっともっと独自色が強くなっていくと思います。さらにその先には、いろいろな意味でディズニーにしかできない企画もやはりあると思います。『ぜひ今後にご期待いただきたいなと思っています。

――期待しています。ありがとうございました！

――――――――――――――――――――――――――――――――
何よりもアニメが好きであるというマインドがひしひしと伝わってくる、非常に誠実かつ真摯な語り口が印象的だった八幡氏。もちろんそれだけではなく、「日本のアニメ」という世界的に見ても優れたコンテンツをさらに一歩先に進めるために、ディズニーとして何ができるのか、ということを真剣に考え、実際にアクションを起こしていこうという気概を感じるインタビューだった。ディズニープラスが見据える「到達点」、その景色を、1人のアニメファンとしても楽しみにしたい。
――――――――――――――――――――――――――――――――
■Disney+（ディズニープラス）
公式サイト　https://disneyplus.jp/
利用料金：月額990円（税込）／年額9900円（税込・実質2カ月分無料）
※Apple App Storeからの入会は月額1000円（税込）／年額9900円（税込・実質2カ月分無料）となります。