• 「ディズニー×日本のアニメ」で花開く新たな未来【前編】――ディズニープラスのアニメーション責任者・八幡拓人氏が見据える “作品との向き合い方” とは
  • 「ディズニー×日本のアニメ」で花開く新たな未来【前編】――ディズニープラスのアニメーション責任者・八幡拓人氏が見据える “作品との向き合い方” とは
2023.05.21

「ディズニー×日本のアニメ」で花開く新たな未来【前編】――ディズニープラスのアニメーション責任者・八幡拓人氏が見据える “作品との向き合い方” とは

▲ディズニープラス (C) 2023 Disney and its related entities



――これだけ配信サービスが普及してきている中でも、いまだに地上波で毎週1話ずつ放送されるアニメをリアルタイムで観るという視聴スタイルは根強くて、近年では、同時に視聴しながらSNSなどで一緒になって盛り上がることに価値を見出す風潮もあります。それに対してどういったアプローチを考えていますか。

八幡 まず、私たちの配信形態では、様々な形があり、いわゆるテレビ放送と同じように毎週1話ずつの配信であったり、場合によっては2話ずつ配信することもあります。逆に言うと、既存の放送に比べて選択肢が広いなと、受け止めていただきたいと思っています。やはり作品ごとに、それぞれ魅力や個性があり、我々はグローバルで展開する配信プラットフォームなので、たとえば毎週1話ずつ配信する場合には、国内と同じタイムラインで、海外でも観られる状況を作り出すことができます。そうすると、同じ作品についてSNS上で盛り上がっているのが日本語だけではなくて、英語でもフランス語でもポルトガル語でも、様々な言語で同時に盛り上がれる。これはすごいことですよね。素晴らしい日本アニメ作品を世界中のファンが楽しんでいただけるというところを目指していきたいです。

――他に配信サービスの利点としては、振り返ってまとめて観直したりすることが容易であるということも挙げられると思います。個人的には『サマータイムレンダ』は結構ストーリーが難解なので何度も観直しました。

八幡 おっしゃる通りですね。最新話の前に、その前の回をもう一度観直して、気持ちを入れてから観るということが個人的にはあったりします。何回でも観られるというのはメリットも多いですよね。

▲『サマータイムレンダ』
(C)田中靖規/集英社・サマータイムレンダ製作委員会

――全話でなくとも直近の2話くらいはさかのぼって観直したい、みたいなことってありますよね。

八幡 わかります。いつでもどこでも、キャッチアップができるというのは、強みであると思います。

――日本のアニメスタジオとタッグを組んで作品に関わっていく中で、日本のアニメが持っている強み、世界に対してアピールできるポイントというのは、どういうところだと考えられていますか?

八幡 まず1つ目は、この業界の歴史ですよね。ディズニーは今年で創立100周年を迎えますが、日本のアニメには実はもっと長い歴史があって、脈々とその文化が継承されています(※)。100年後にも一種の伝統技能みたいなものが継承されているということは、ほかの国にはなかなかない強みだと言えると思います。その上で新しい技術はどんどん取り入れて進化を遂げているということも、やはり日本のカルチャーがすごく強いところだなと。
2つ目としては、圧倒的に題材となる作品の多様性・独自性があることです。それは漫画や小説、ゲームなど、アニメの着想を得る、または原作となるものが、世界的に見ても非常に成熟しているからです。作る題材がなくならないというか、毎年新しい作品や表現が生み出され続けている環境の中で、アニメ業界も切磋琢磨して競い合っているわけで、どんどん更新されて進化しているのが日本独自の強みだと感じますね。
(※)編注:日本最古のアニメーション映画は1917年に公開されたとされる。

――そうした題材の多様性に対して日本のファンは馴染みがありますが、それを海外にも配信する中で、作品選びが難しかったり、何か制限を設けたりといったことはありますか?

八幡 それはあまり感じていないですね。日本で日本人のクリエイターによって作られた作品には素晴らしい良さがあると思っています。それが現れるのは作品の外側ではなくて、根幹であるストーリーテリングにあると思っています。ストーリーテリングというのが何を指しているかというと、それは「普遍性」で、どの国のどの年代の方が観ても感動するものであるかどうか。そこさえしっかりしていれば、文化の違いや、キャラクターのパーソナリティーの違いというのは全く問題にはならないと思っています。なので、その点で難しいなと思ったことはあまりないですね。

――作品選びのベースの部分では普遍性が大事ということなんですね。もちろん各国でレーティングなどには違いがあるでしょうけれども。

八幡 もちろんレーティング部分に関してはそうですし、独自の文化に配慮した表現方法などについては各国で確認しておりまして、それに合わせた表現方法をしっかりと検討しています。

――それに合わせて大元の物語を変えようみたいなことはないということですね。

八幡 「ディズニーってそういうこともやっていいんですか?」と質問されることがあるんですが、まさにそれを新たにやっていこう、という旗印として立ち上げたのが「スター」というブランドです。バイオレンスもありますし、セクシャルな表現も必然性があれば描いていますし、エンターテイメントの要素が存分に入っているので、そこで何か躊躇するということはないですね。「スター」イコール「ディズニーだけじゃない」と思っていただければ非常にわかりやすいと思います。

――今までのいわゆる「ディズニー」というパブリックイメージからはちょっと逸脱してもいいよっていう。

八幡 そうですね。より多様な、それこそゼネラル・エンターテイメント、いわゆる総合エンターテイメントなので、そこにはどんなジャンルがあってもいいよね、各国の作品があってもいいよねという感じで、私たちの新たなスタートとして門戸を開いた。それが新しいコンテンツブランドの「スター」なんです。
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インタビュー前編では、日本のアニメが世界に対して持っている強みや、それを配信していく上でディズニープラス、特に「スター」というコンテンツブランドがどういった立ち位置であるか、といったことについて語ってくれた八幡氏。後編では、さらに深掘りしたお話を伺っているので、ぜひ続けて読んでみてほしい。
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■Disney+(ディズニープラス)
公式サイト https://disneyplus.jp/
利用料金:月額990円(税込)/年額9900円(税込・実質2カ月分無料)
※Apple App Storeからの入会は月額1000円(税込)/年額9900円(税込・実質2カ月分無料)となります。

アニメージュプラス編集部

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