木村拓哉が魅せる成熟したヒーロー像『SPACE BATTLESHIP ヤマト』【日曜アニメ劇場】

そして、この映画の味わいを決定づけているのは、やはり主人公・古代進を演じきった木村拓哉だ。
本作の古代には、原点であるアニメ『ヤマト』の古代にはない過去の大きな “挫折体験” が追加されている。生い立ちこそ不幸だがあくまで成長過程の若者だったアニメの古代に対し、本作の古代はすでにある程度の成熟した大人であり、悲劇的な過去を乗り越えて未来のために戦う男として描かれているのだ。
さらに木村が醸し出す独特の軽快さや明るさは、深刻になりすぎない前向きで魅力的なキャラクターを生み出し、ドラマチックなストーリーをさらに力強く牽引していく。木村は元々原作アニメのファンだということで、本作に賭ける思いも重なったのか、当時40代を目前にして大人の役者へと変貌しつつあったその存在感が、本作の古代に確かなリアリティを与えている。

ノスタルジーではなく現代のエンターテインメントとして本作に取り組んだ山崎貴監督の手腕も見逃してはならない。VFXや3DCGを駆使した映像でエモーショナルな物語を表現することに定評のある演出は本作でも遺憾なく発揮されており、豪華キャストが集結した濃厚なドラマは勿論のこと、重厚感あふれるメカニックやスピーディーに展開する戦闘シーンを３DCGを駆使するなど、近年の日本映画では珍しい本格的なSF超大作ならではの娯楽を追求しているところは注目に値する。

現在新作アニメシリーズ『ヤマトよ永遠に REVEL3199』が制作進行中と、時代を超えて愛される『ヤマト』の世界。
今回の放送では、実写作品ならではのその新鮮な魅力を堪能してほしい。

（C）2010 SPACE BATTLESHIP ヤマト製作委員会