――他に撮影時の現場での印象的な出来事はありますか。松尾 緊張感漂う現場で、特に巨災対のメンバーはセリフも難しいのでずっと練習していたりしていたんですが、市川実日子ちゃんが「庵野さん、(『風の谷のナウシカ』の)巨神兵描いたんでしょう? ちょっと描いてみてよ」って言ったんですよ。
――ええっ!? そんなカジュアルな感じで?松尾 実日子ちゃん、前に庵野さんと一緒に仕事をしていたから(『キューティーハニー』秋夏子役)めっちゃフランクに話しかけて、庵野さんもサラサラーって描いて、もう皆大盛り上がりでしたよ。あと高良健吾君が庵野さんの大ファンで、現場で庵野さんを見ながら「庵野さんだ~」って、いつもニコニコしていました(笑)。
――ちなみに苦労した思い出は……。松尾 いやー、辛すぎて言えません(笑)。お分かりだと思いますけれど、生半可にできた映画じゃないんですよ。巨災対のメンバーや官邸の人たちは難しい台詞を一気にまくし立てて、やっと言えたと思ったら「カット! すみません●●さん、2ミリ左に動いて下さい」って言われてもう1回、なんてことが多かったらしいんですから。幸い僕のところは1カットが多くて、ある程度は自由にやらせてもらえたので良かったですけれど。
――本編でシン・ゴジラの姿を見ての感想はいかがでしたか。松尾 (石原)さとみちゃんの言葉じゃないですけれど「神の化身」でしたね。初めて青い光線を吐く場面は今でもよく観ますから。あそこでかかる音楽(「Who will know (24_bigslow)/悲劇」)はiPhoneのプレイリストの「お気に入り」に入っていて、運転しながらあの音楽を聴いていると、人間という存在の小ささや「この街のどこかが燃えているんじゃないか?」とか、いろいろ考えちゃいますよね。
――役のインパクトがあまりに凄すぎて、あれ以来「松尾さん=泉」みたいな感じになっているんじゃないかと思いますが、その辺りで得したこと・損したことはありますか。松尾 上映後のイベントの時など、たくさんの若い女性の方々から「泉ちゃーん!」と黄色い歓声を浴びせられたんですが、まああんな体験は最初で最後なんでしょうね(笑)。
あと弊害ということで言えば、それ以来頭の良い弁護士みたいな役ばかりが舞い込んできて、セリフ入れが難しくなって大変です(苦笑)。
――頼れる泉のイメージが災いした(笑)。しかし泉を含めて、『シン・ゴジラ』の登場人物って登場時間の短さに反して結構印象に残っている人が多くて、そこも凄いですよね。松尾 キャラクター作りがちゃんとされているからなんでしょうね。それぞれ役割を演じるところがしっかりと描かれている、それは庵野さんの力なんじゃないでしょうか。
――今後のゴジラワールドでもし機会があったとしたら、泉というキャラクターでどんな活躍をしたいと思いますか。松尾 政界を引退して、田舎の畑で農作業をしている時にゴジラを目撃して「ゴ、ゴジラだー!」と指さして騒いでみたいですね。
――それ、泉じゃなくても良い気がしますけれど!松尾 とにかくゴジラの最初の目撃者になりたいんですよ!
――では最後に、『シン・ゴジラ』に今後どんな展開を期待したいですか?松尾 それこそ今後『シン・ウルトラマン』とのリンケージがあっても面白いし、最終的には続編なんかも……純粋にあのラストの続き、気になりますものね。ゴジラはもっと大きくなるのか、他の何かと戦うことになるのか、とか。あと東京以外で暴れたり、他の怪獣――シン・モスラ、シン・キングギドラみたいに登場してくると楽しいんじゃないでしょうか。
>>>「まずは君が落ち着け」シン・ゴジラのフィギュアで遊ぶ松尾諭さんの写真を見る(写真7点)TM &(C) TOHO CO., LTD.