現在放送中の『王様ランキング』が、いよいよクライマックス直前! 盛り上がるストーリーに併せて、アクションシーンもさらに激しさが増している。
アニメージュプラスは、かわいい絵柄で描かれる激しくカッコいいアクションがいかにして生まれたのかに注目、キーマンとなる監督・八田洋介さん、キャラクターデザイン/総作画監督・野崎あつこさん、副監督・今井有文さんへのインタビューでその魅力の秘密に迫った(全3回)。
第1回目となる今回は、『甲鉄城のカバネリ』『進撃の巨人 Season2』で作画監督、『東京マグニチュード8.0』でキャラクターデザインを務め、『王様ランキング』ではキャラクターデザイン/総作監を務めた、野崎あつこさんへのインタビューを掲載。『王様ランキング』だからできた作画表現や、原作の絵が持つ魅力を語ってもらいました。
【シルエットだけでキャラクターが分かる、デザイン性の高さ】
――『王様ランキング』の原作絵を最初に見た時の印象は?
野崎 キャラクター全員がシルエットになっても分かるようなデザインになっているところが、やっぱりすごいですね。王冠を被っているだけでボッジだと分かるって、すごくないですか? しかも、それぞれの個性に合ったフォルムになっていて、かつ、誰ともイメージが被っていないんですよね。デザインとして、すごく完成されている絵だと思ったので、私が作業するときもそこを活かすよう意識しました。
――野崎さんから見ても魅力的な絵だったんですね。デザインを起こされる際に苦労された点などはあったのでしょうか。
野崎 たとえばボッジの王冠なんかは立体ではなく、だまし絵として描かれているんですね。実はキャラクター全員にそういうポイントがあるので、アニメとして動かすために、その辺りを注意しながらデザインの作業をしました。
――ちなみに、野崎さんが個人的にお気に入りのキャラクターは誰ですか?野崎 やっぱりたくさん描く機会があると、そのキャラクターに愛着がわいてきて好きになるんですけれど、この作品はキャラクターそれぞれにしっかり見せ場があるので、好きなキャラクターもその時々で変わっています(笑)。今のお気に入りは……ダイダですかね。
――わかります。第二十一話で四天王がボッジにつくと言ったあとに一瞬見せる、(ボッスの入った)ダイダの少し嬉しそうな表情もすごく良かったです(笑)。野崎 いいですよね(笑)! 確かにボッスが入っている間のダイダは、普段なら見せない表情もするので面白かったです。
【シンプルなデザインだからこそ挑戦できた表現】
――続いて本作のアクションシーンにも注目したいと思います。見ごたえのあるアクションシーンを生み出すにあたり、どのような取り組みをされましたか。
野崎 やはりメインのアニメーターさんたちが担当してくださったのが大きいポイントだと思います。キャラクター自体も線が少なくて動かしやすいので、しっかりキャラクターを動かしたいアニメーターさんたちが作品に集まってくれましたし、背動(背景動画※)がうまくハマったのも良かったです。
※背景はふつう1枚絵になっているが、キャラクターと同様に背景も1枚1枚作画して動かす方法。
――背動は作業的には大きな負担になりそうな印象がありますが……。野崎 でも、他作品の背動と比べたら楽なんですよ。背景の線が少なくてもキャラクターがシンプルなので違和感なく見えますから、意外に作画量的にはそこまで大変ではないんです。だからこそ、カメラワークにも凝った躍動感のあるカットにも挑戦しやすかったんだと思います。
――ちなみに、野崎さんお気に入りのアクションシーンは?野崎 いっぱいあるんですけれど……(笑)、第三話のアピス VS ベビン、第六話のボッジ VS 隊長、第十六話のデスハーが雷をビリビリさせるところ、第十九話の四天王 VS オウケンあたりがお気に入りです。
あとは、第一話のラストの剣戟のシーンを、今井有文さんと藤沢研一さんがそれぞれ30カットずつくらい担当してくださったのが、すごくありがたかったです。あのシーンは、まだみんな手探りで作業をしている中で「こうやって動かしたらいい」という道筋を示してくれたと感じています。
――具体的に、どういう刺激を与えられたのでしょうか。野崎 お二人は私が考えていたよりもキャラクターをアニメ的に――柔らかくのびのびと動かされていたんですね。その一方で細かいカメラワークをつけることでリアリティのある画面作りをされていて、実に上手い着地点を見つけていただいたと思いました。
(C)十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会