• 『地球外少年少女』やまむらはじめを魅了した物語・作画・磯光雄の才能
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2022.02.12

『地球外少年少女』やまむらはじめを魅了した物語・作画・磯光雄の才能

(C)MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会


――全6話の中で、お勧めのエピソードはありますか?

やまむら そうですね……第1話は情報の洪水に流れる感じが非常に心地よいというか。 特殊な状況が当たり前になっている世界観の中で、登場人物たちが当たり前に振る舞っているところを見ると、こちらの理解が追い付かなくても満足しちゃうんですね。何せ、こっちは小学生の時に『スター・ウォーズ』よりも『2001年宇宙の旅』をカッコいいと思ってしまったような人間なんで……。

――その感覚、よくわかります(笑)!

やまむら あとは5話のクライマックスが面白かったかな。他の作品では見られないような展開でワクワクしましたよね……って言うかですね、今はあえて取り出しましたけれど、作品全体が満遍なく良くて、突出したところがない印象ですね。

――それ、すごい感想ですね(笑)! では、やまむらさんがお好きな作画的な見どころに関しては。

やまむら いやー、吉田さんの絵は瑞々しくて良いなぁと思いました。吉田さんが描くと画面が弾んで見えるんですよ。逆に言えば、それくらい吉田さんの絵の魅力がハッキリわかるので、もし1~2クールのTVシリーズだったら絵のクオリティ維持の問題も出てきて、作品の印象も変わっていたかもしれませんね。その辺は井上俊之さんの下支えが多分にあるんでしょうけど、素人には最早どこをやってるとかさっぱり分からない……。

あと吉田さんの絵柄について『交響詩篇エウレカセブン』や『Gのレコンギスタ』は同じライン上で描いている印象がありますが、今回に関してはズラしてきているというか……吉田さんっぽいんだけれど、吉田さんではない、という感じ。多分、そこには磯さんの要求が大きく反映されているんでしょうね、吉田さんと磯さんの作画の方法論には違いがあると思うので。

――しかし、ここまで語っていて何なんですが、この作品って前情報を何も知らずに観るのが一番楽しめる方法なんじゃないかなって気がしますね。

やまむら ええ。それに加えるなら、劇場公開がメインってことなんでしょうけれど、この作品は6話構成で1話は宇宙生活、2話が事故、3話が脱出劇と1話ごとに話の主題を絞って3色団子(話数は6本ですが)のように見せているので、1話1話、時間を置いて観た方が良い気がします。ここまでクオリティが高いと、僕的には毎週1話ずつ、3~4回観直して自分を高めて次回に臨むみたいな体制が望ましい。そういう見方の方がキャラへの思いも強くなっていきますし。

――Netflixではそういう楽しみ方をしてほしい、と。

やまむら で、劇場版の醍醐味はやっぱり大きいスクリーンと音響での作品への没入感ですよね。あれだけのクオリティなら、大画面で観る価値は間違いなくありますから。

――改めて、本作を通して磯光雄という才能に関してどんな印象を抱きましたか。

やまむら 名アニメーターが監督を務めた作品って固い印象のものが多いんですが、こういうバラエティに富んだものを作れる才能って、雑な言い方ですが宮崎駿さん以来じゃないでしょうか。『電脳コイル』1話でデンスケが逆立ちしようとして失敗する場面を観た時、「あ、このアニメは大丈夫だ」と。そういうものを作品に入れられる作家は信用できます。何かに偏ることのない、すごく健全な作品作りをされているんだなと理解しました。しばらくはこの『地球外少年少女』を何度も繰り返して観て、その魅力をとことん味わおうと思います!
▲やまむらはじめさんが本記事のために描きおろした『地球外少年少女』イラスト。

やまむらはじめ

5月1日生まれ。石川県出身。同人誌活動を経て『マージナル・ミラージュ』にてプロデビュー。代表作は『カムナガラ』『エンブリヲ・ロード』『未来のゆくえ』『神様ドォルズ』『漆黒のジギィ』ほか。現在「YOUNG KING OURS」にて『ドラゴンズサマー~クロとわたしの夏休み~』を連載中。

>>>『地球外少年少女』前編・後編場面カットを見る(写真36点)

(C)MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

アニメージュプラス編集部

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