★積み重ねを経た “古代艦長” ★小野 安田監督が今回の『2205』を手掛けるにあたっては、やはり出渕裕さん(『2199』シリーズ総監督)や羽原信義さん(『2202』シリーズ監督)の『ヤマト』があって、その流れからの受け渡しという面もあるわけじゃないですか。そこは、どうでした?
安田 そこは、わりと能天気に構えてしまうほうなので(笑)。最初にお話をもらった時も「(これまでのシリーズの内容を)知らなくていいですよ、好きにやっていいですよ」と言っていただいて。じゃあ、何をしようかなと思って打ち合わせに臨んだら「……やっぱりそうもいかないよなぁ」って(笑)。
小野 ははは(笑)、そうですよね。
安田 そこからあらためて勉強して、何ができるのか、入れられそうな新しい要素は何かと探る段に入りました。
小野 おもしろいな。僕も『2199』の時に同じ立場でした。みなさん「 “小野大輔の古代進” でいいんだよ」と言ってはくれるんですけれど、いや、そうもいかないだろう、と(笑)。そういう想いは、僕にもありました。
安田 みんな言うんですよね。「役者さんが命を吹き込むことでキャラクターが完成するから、自由にやっていただければ」って。でも、そんな小野さんももう古代を10年近く演じてこられたわけですよね。これだけ長いのも珍しいのでは。
小野 そうですね、これだけ長い期間、関わったキャラクターっていないです。でも、これまで演じてきた古代も、今回の古代も、やはりすべて古代だなと思っていて。『ヤマト2199』の古代は悩んで、悩んで、それでも持ち前の突っ走る性格で打開していった。いちばん熱血だったのが『2199』の古代だったと思います。
安田 そうですね、若さもあって。
小野 そして、葛藤の中で悶え苦しんだのが『2202』の古代で、今作『2205』の古代は、それを経て覚悟が決まっているという印象です。
安田 あるインタビューで、インタビュアーさんが「今回の古代は “古代君” ではないですね」とおっしゃったのですが、そこは逆に、僕は意識していなかったところなんです。というのも僕自身『ヤマト』については、原作も今回のシリーズの前作もあまり知らないところでシナリオを読んだので。最初から “古代君” ではなく “古代艦長” というイメージで受け取って、描いていきました。その結果、これまでの積み重ねがあった上での “古代艦長” としてひとつ線を引けたというか、ブレずに描けたのかなと感じます。逆に、かつての古代のような “若さ” や “やんちゃさ” は、今回は土門が担ってくれましたから。
小野 ああ、そうかぁ……。
安田 そういったキャラクターの描き分けでうまく世代の差が出せたのもよかったかなと、後になって気付きました。
小野 確かにおっしゃるとおりですね。前へ前へというアグレッシブな部分は、土門が担ってくれていたんだなぁ……だからなのか、今回の古代がいちばん落ち着いていますよね。もちろん、迷いはまだあるけれど。
安田 抱えているモノはあるにしろ、基本はどっしりと構えて、決めるところはしっかり決めてくれる。そんな古代が描けたのは、小野さんのおかげですね。デスラーとスターシャの関係、若手クルーの成長など、物語にもいろいろな柱があって、キャラクターも多かったですが、小野さんの古代はしっかり自分の存在感を示してくれたと思っています。
小野 ありがとうございます!
安田 こちらこそ、ありがとうございました。
小野大輔【古代進役】
5月4日生まれ。フリー。主な出演作は、『SELECTION PROJECT』(スミパンダ)、『吸血鬼すぐ死ぬ』(ヒヨシ)、映画『劇場版 Free!−the Final Stroke−』(金城楓)ほか。
安田賢司【監督】
主な監督作は『創勢のアクエリオンEVOL』、『マクロスΔ』、『博多豚骨ラーメンズ』、『ソマリと森の神様』ほか。
(C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会