• 押井守が『ぶらどらぶ』に込めた「自分が面白いこと、やりたいこと」
  • 押井守が『ぶらどらぶ』に込めた「自分が面白いこと、やりたいこと」
2021.02.04

押井守が『ぶらどらぶ』に込めた「自分が面白いこと、やりたいこと」

(C)2020 押井守/いちごアニメーション



押井 だから海外含めて何らかの形で回収できればいいと思ってはいるけど……これが海外で受けるのかが最大の疑問(一同笑)。「そうはイカの金メッキ」ってセリフ、どう翻訳するんだろうね。今回OP・EDは国内用・海外用と2パターン作ったんだけど、あれはノータッチ。僕、元々OP・EDの演出ってしたことないんですよ、向かないから。でも、今回の国内OPは気に入った。乾いたタッチなんだけど妙な色気がある絵で、アニメにしかできないことをやっている。あれは良いよ。

――吸血鬼は海外でも人気ですから、意外に受けるんじゃないですか。ところで、押井さんにとって吸血鬼という存在の魅力とは?

押井 吸血鬼は昔から好きで、ハマープロのホラーからポランスキーの『吸血鬼』まで、目についたものは何でも観ているけど、本当に気に入ったものは実はまだ一つもない。

――えっ、一つも?

押井 スウェーデン映画の『ぼくのエリ 200歳の少女』は上手くできてるなと思ったけど、あれは子どもの話、ファンタジーの世界でね、もうちょっとリアルな世界のものがいい。あとキャスリン・ビグロー監督の『ニア・ダーク/月夜の出来事』は完全に難民として扱っていて、ヴァンパイアという存在を初めて等身大に感じられたかな。

実は企画で関わった『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の小説を書いているんだけど(「獣たちの夜」)、これをずっと実写化したいと考えていた。ただし日本が舞台じゃ無理、ポーランドで撮りたいと考えていて、結局それは叶わなかった。あとで実写化された (『ラスト・ブラッド』)のを観て「俺に撮らせれば!」って思ったよ(苦笑)。日本を舞台に吸血鬼を描くならアニメ、なおかつドタバタしかないんだよ。だから今回一つの夢は叶えたけど、まだ実写は諦めていないからね?(笑)

――なぜ押井さんはここまで吸血鬼に魅了されるんですか。

押井 改めて考えて思ったのは、要するに人間ならざる者、異文化ということ。人間そっくりなんだけど生態系と価値観が違う者を描くっていうことは、要するに人間の物語になるんです。価値観の相違を巡って血を流す、というのはあらゆるドラマに通底するものだからね。僕好みの非日常な舞台で、しかもとんがったキャラでそれを実現するとしたら、吸血鬼かサイボーグのどちらかですよ。これぞ身体性の両極ですから。で、サイボーグはもうさんざんやったから。

――ええ、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』と『イノセンス』でたっぷりと。

押井 そこにアニメシリーズの誘いがあったらそれをハメこんで、今できることを全部つぎ込んだっていうね……正直言うとね、僕も「これ、本当に売れるのかな?」って思ってるんだけど(一同爆笑)。

▲サラマンダーと空自の空中戦が展開!……って、何で!? 

――ワハハハハ、ちょっと待ってください! どういうことですか!

押井 僕の経験上、好き放題やってスイスイ現場が進んだ作品はだいたい売れる印象がある……でも、本当に好き放題やった『御先祖様』は全然売れなかった(一同爆笑)。

――いきなり法則が揺らいでるじゃないですか!

押井 だから、まあわかんないと言えばわかんない。頑張って売れるならいくらでも頑張るけど、そうじゃないじゃないでしょ。

――そりゃそうですけれど(笑)。では本作がヒットしたらセカンドシーズンの可能性も?

押井 やれと言われればやりますよ。『パト』と一緒、日常ものの良さっていうのは、何でもいくらでもできること。西村君が付き合ってくれるなら、もうナンボでもやりますので。

(C)2020 押井守/いちごアニメーション

アニメージュプラス編集部

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