◆『サヨナラナミダ』
幹葉「彼女たちの思いをスピラ・スピカが伝えていかなきゃいけない」
――ポジティブなタイトルを発表されることが多いスピラ・スピカさんですが、今回は切なさを感じます。どのようなメッセージを込められたのでしょうか。
幹葉 いつもだったら、シナリオを読み進めていく中で、自分やスピラ・スピカと重なる気持ちを持っているキャラクターやシーンを見つけ出して、それを軸に歌詞を広げて書いていくことが多いんです。でも、今回は「戦争」っていう、自分の今までの過去の経験にあまり当てはめることができない物語だったので、「どういうふうに書いていったらいいんだろう」という壁にぶつかりました。
――どのように壁を乗り越えていかれましたか。
幹葉 自分は、感情移入しやすいタイプなので、「そういう経験が自分にないんだったら、いっそこの物語に入り込んでしまって、主人公のクラウちゃん(※クラウディア・ブラフォード)であったり、そういうキャラクターになりきったつもりで想像しながら歌詞を書いていこう」と思って書き進めていきました。戦いに挑み続ける彼女達の姿は本当にかっこいいけれど、実はその心の奥底で、そこには出すことができない痛みや悲しみを持っているなと感じて。彼女たちがうまく出せないであろう悲しみの感情たちを、スピラ・スピカが歌詞や歌や音で代わりに寄り添って代弁していけたらという思いで、歌詞を綴っていきました。
――こちらの歌詞ですが、ラストでは希望が見えるような展開になっているかと思います。主人公達の生き方は、悲しいだけじゃないといったことを表現されたのでしょうか。
幹葉 今までのスピラ・スピカの楽曲だったら、もっともっと分かりやすく歌詞の結末で希望や明るい未来を歌っていたと思うんです。しかし今回は、結末を聞く人に委ねてみたいなって。最後では《いつかまた逢える》と歌ってはいるんですけど……ここは、プラスの意味に聞こえる面もある一方で、もう会うことが叶わない大切な人のことを歌っています。「その人に会いに行く」ということは「自分もそちらの世界に行ってしまうのか?」みたいな、そういう捉え方もできると思うんです。「本当に大切だけど、もう会うことが叶わない人を想い続けるのは、幸せなことなのか悲しい結末になるのか」という問いがあったとして、いつもだったら、答えを分かりやすく提示していたんですが、今回はこの言葉に込めました。
――幹葉さんは、作詞をされる際にはメンバーの皆さんに相談されますか?
幹葉 結構私が独りで書いて……でも、壁にぶつかって「はあ……書けん! どうしたらいい!?」ってなった時は、メンバーに聞いたりすることはありますね!
――そういう時は、寺西さんとますださんはどんな言葉を返されるんですか?
寺西 「うーん」ってなっている場合は、同じところをずっと見続けていたりするんですよね。一歩引いた目線でアドバイスできるのは僕らしかいねえ! って、相談に乗ります。
幹葉 私が、集中したら「ガッ!」とそこしか見えなくなるタイプなので、そういうところに助けられてますね。
ますだ 僕は、何か面白いフレーズがあったら投げてみるという感じで返しています。
――幹葉さんは、どのような思いを込めて歌われたんでしょうか。
幹葉 今回は、作詞の段階から本当に感情が入り過ぎてかなり苦しくって……。レコーディングも同じで、心をすり減らすくらいの思いで臨みました。ここまで悲しみを歌っている曲は今までのスピラ・スピカにはなかったので、最初は悩むところもあるかなと思っていたんですが……レコーディングが始まるとすんなりと感情移入したまま挑むことができました。今も練習で歌っていて胸がぎゅっと苦しくなるところがあるんです。でも、どれだけ苦しくても、キャラクター達の思いをスピラ・スピカが伝えていかなきゃいけないという使命感を持って歌っています。
――本楽曲は、メロディは勿論、アレンジもとても美しいと感じます。寺西さん、ますださんは演奏面などで意識されたことはありますか。
寺西 まず、お話を読ませていただいて、どんな曲にしようかと考えた時に、主人公を始めとしたキャラクター達が人生を賭(と)して戦っているというところに対して、鎮魂歌のようになれたらいいかなという思いがあって。鎮魂歌にするには「歌」ありきということで、歌にフィーチャーしました。同時に等身大の感じをメロディで出せたらと思いSakuさんに相談をしたら、すごくいいエッセンスを出してもらえました。ストリングスも壮大で。全体の抑揚も含めて、ギター、ベースはあまり前に出過ぎないように、でも、やっぱり「そこ」にいる・支えていくアプローチをしています。
――前に出ないけれど「そこ」にいるという部分は、戦闘機やパイロットを支える多くの方々の存在にも当てはまる気がします。
幹葉 うんうん。
寺西 前に出て行く人だけじゃなく、バックアップしてくれている人とか、そういうところももっと見られていくべきなのかなと思いますね。
ますだ 僕は、最初聴いた時の印象としては、ぐっとくるような切なさとか悲しみのイメージがすごく湧いて。ベースでは、そうした部分の表現をどうにか曲に落とし込めたらとベースラインを考えていったんです。フレーズ面でいうと、サビから後半の間奏にかけてのベースラインはリフでゆったりと流れるような感じで弾いていき、低音での和音や音の空白を作ったりと切なさを感じる響きや余韻を作りました。あとは……ボーカルを立たせたいというコンセプトがあったので、一歩引いてるけど絡み合うようなフレーズを組み合わせたりして、よりエモーショナルな面にフィーチャーしています。
――皆さんは、どのようなモチベーションでレコーディングに臨まれましたか?
幹葉 作編曲をしてくださっているSakuさんとは、初めてのタッグだったんです。初めての方とレコーディングをするという不安もあったんですけど、Sakuさんもこの曲をすごく大切にしてくれていたりとか、ご本人がとても気さくということもあって、当日は不安なくレコーディングに挑めたという思い出がありますね。