• 佐倉綾音が胸躍る挑戦と「未完成」のロマンを楽しんだ『クラメルカガリ』の世界
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2024.04.19

佐倉綾音が胸躍る挑戦と「未完成」のロマンを楽しんだ『クラメルカガリ』の世界

(C)塚原重義/クラガリ映畫教會

ノスタルジックでミステリアスなSF/ファンタジー世界を独特な感性で描き出すアニメーション作家・塚原重義が、満を持して放つ長編アニメーション作品『クラユカバ』と『クラメルカガリ』。同じ世界観をベースに、それぞれ異なるテイストで楽しませてくれる2作品が4月12日(金)より同時に公開開始となった。
そのうちの1本『クラメルカガリ』は、炭鉱の町・箱庭の物語。炭鉱夫たちの採掘により日々変化する迷宮のような道を、小さな身体を活かして探り地図を作る“箱庭紡ぎ”を営む少女・カガリの姿と、箱庭をめぐる人々の思惑やその先の騒動を描く冒険活劇だ。
カガリを演じるのは人気声優の佐倉綾音。いつもとはひと味違う新鮮なトーンの声と演技で、独特な物語世界を彩っている佐倉は、本作のどこに魅力を感じ、それをいかに表現しようとしたのだろうか?

◆肩の力を抜いたオーディション◆

――『クラメルカガリ』の世界、そして演じられたカガリというキャクターの第一印象はいかがでしたか。

佐倉 オーディション時にいただいた資料は情報量が少なくて、世界観がわかる場面写真のようなカットが数点とキャラクターデザインだけだったのですが、まず、そのキャラクターデザインが個人的にとても好きでした。
私は描き込まれた絵か、徹底的に引き算されている絵かの両極端が好みなのですが、この作品のキャラクターはかなり引き算でデザインされています。線を減らすと単純に情報量も減りますが、この作品はシンプルな線でもキャラクターにちゃんと愛嬌があって、「本当に絵の巧い人」でないと表現できない世界が展開していると感じました。カガリもちょっと片目が隠れているデザインからミステリアスな雰囲気が読み取れて、この子のこと好きかも、というのが第一印象でした。

そしてもうひとつ、世界観全体が茶色っぽくて紙のような質感を感じさせてくれるところにも惹かれましたね。私自身、小さい頃から絵を描くのが好きでしたが、デジタルで絵を描くことを覚えてからも必ず紙のテクスチャを使って描いているんです。
セピアな質感の絵が好きなので、作品自体のレトロな雰囲気も含めて少し懐かしい気持ちにもなり、「この世界に入れたらきっと楽しいだろうな」という気持ちでオーディションテープを作りました。

――カガリ役のオーディオションには、どんなイメージで臨みましたか?

佐倉 イメージを構築する時は、そのキャラクターが持っている信念や叶えたい夢などの“原動力”が大事だと思っていて、そこをまず見極めようとします。でも、カガリはいただいた資料からそこがあまり読み取れなくて……(笑)。オーディション用にいただく台詞も、普段はそのキャラの大事な部分が抜き出されて「これを表現してみてください」と挑戦状のように突きつけられることが多いのですが、カガリの台詞は何となくぼんやりした、マイペースさが押し出されたものばかりだったので、かなり緩いキャラクターとして構築していいのかもしれないと思いました。

ちょうど自宅でオーディションテープを録ることを覚えた時期だったので、家にいる素に近い自分のまったり感、肩の力が抜けたゆったり感を載せてみようかなと、背中を丸めて座ってダラッとした状態の中、パキッとした色使いの作品だと絵に負けてしまうくらい緩い発声と滑舌でテープを吹き込んでみたんです。
そんな風に「飾らないこと」は自分的にも挑戦でしたし、あまり他の作品で使ったことのない声のトーンでした。


※塚原監督の「塚」は正しくは旧字体です

アニメージュプラス編集部

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