• 湯浅政明が貴重な短編上映イベントで語った自身の歩みとアニメーションの魅力
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2024.03.20

湯浅政明が貴重な短編上映イベントで語った自身の歩みとアニメーションの魅力

イベント上映のトークに登壇した湯浅政明監督


『キックハート』(2012)は、当時としては珍しいクラウドファンディングを活用して制作されたSMプロレスコメディという異色作。
湯浅監督は「少数のスタッフで制作したため(現場は)とにかく大変だった」と当時を振り返り、特に印象的なビビッドな色遣いとアメコミタッチの絵柄は「三原三千夫さんのキャラデザインで、乾いたアメコミっぽさを目指しました。海外の人にはウケるんじゃないかなと思っていたら、そこまで(国内の反響と)大差はなくて。この辺りから日本と海外の作品への反響のタイムラグがなくなっていったんですね」と語った。
▲『キックハート』(C)2012 湯浅政明・Production I.G

『アドベンチャー・タイム/フードチェーン』(2014)は、アメリカ「カートゥーン・ネットワーク」で放送された人気アニメシリーズの人気エピソード(第80話)で、アニー賞にもノミネートされるなど評価の高い1作だ。
主人公のフィンとジェイクが、メタモルフォーゼを繰り返しながら食物連鎖の流れを学んでいく内容だが、そもそも海外で注目され始めたのは『マインド・ゲーム』(2004)がきっかけだったのでは、と語る湯浅監督。「メジャー作品で好き勝手やっているのを見て、向こうのアニメーターの人が『元気が出た』とか言ってくれているみたいです」とのこと。『キックハート』をきっかけにして話を貰った際には「何らかの形で作品に関われたらいいな」くらいのつもりだったが、即座に「(エピソードを)作ってくれ」という話になり驚いたという。絵コンテ作業はコマを横に並べてスタッフとディスカッションして進めるなど、制作の工程なども日本と違い、大きな刺激を受けたそうだ。
▲『アドベンチャー・タイム/フードチェーン』(C)2024 Warner Bros. Discovery, Inc. or its subsidiaries and affiliates. All rights reserved.

初監督作品から25年を経て何か変化はあったか、という問いには「ストーリーや “どういうものを作るべきか” を考えるようになった」という回答が。自身がアニメーターということもあり、初期はアニメーターやスタッフがやりやすい様な形を考えていたが、『マインド・ゲーム』に「わかりにくい」という意見を貰ったことから、もっと広く作品を伝えることを意識しているという。

前日に映画祭で上映された『犬王』(2021)の話題や音楽について、また気になる次回作に関しては「現在いろいろな企画をやっています」などと、自然体でトークを進めた湯浅監督。
観客との質疑応答を経て、最後に「アニメーションの楽しさはどこにあるのか」と問われると「何でしょう……全然わからないですね。楽しい瞬間もあれば面倒くさい、大変だと思う時もありますし。でも『全部人が作ったもので何かを表現できるはずだ』と思って取り組んでいます」と自身の思いを明らかにして、イベント上映は幕を閉じた。
▲左よりMCを務めた映画祭のプログラム・ディレクター数土直志さん、湯浅政明監督


>>>イベント上映作品、イベントに登壇した湯浅監督を見る(写真9点)

アニメージュプラス編集部

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