• 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』アムロとシャアの最終章に込められた「呪い」
  • 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』アムロとシャアの最終章に込められた「呪い」
2023.12.15

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』アムロとシャアの最終章に込められた「呪い」

(C)創通・サンライズ


『逆襲のシャア』は、アムロとシャアという二人の主人公のドラマの最終章である。
クライマックスでの一騎打ちは、赤裸々な会話劇が同時に進行する特有の演出、俗に言う“富野節”の魅力と共に、アムロとシャアのパイロットとしての高い技能、そしてニュータイプとしての成熟をあらためて堪能できる必見のシーンだ。
本作でシャアが搭乗するモビルスーツは真紅に彩られた高性能機のサザビー。そしてアムロが操るνガンダムは、初めてサイコミュシステム(ファンネル)を搭載した白を基調とした機体。ファーストガンダム以来となる白と赤のモビルスーツの激突は、本作の大きな注目点としてファンの胸を昂ぶらせる。

その一方で、本作はタイトルにも冠されているとおり、シャア・アズナブルという人間の真の姿に迫るドラマでもある。
シャアは政治家、革命家として理想や主義を語り、大義を掲げ、それを支持するスペースノイドの支持を背負って立つ。だが、アムロとの最後の決戦の最中の互いに本音を剥き出しにした対話によって、シャアを本当に突き動かしていたのは “悲しみ” “後悔” “憎悪” “孤独”……抑えようのない個人的な感情だったということが明らかになる。
大衆を巻き込んで世界に影響を与える思想とその根底に渦巻く感情の混沌、その両面を描くことでシャア・アズナブルという人間の実像が表現される。この重厚なキャラクタードラマこそが、富野監督作品の真骨頂だ。

正義も悪もない正解のない人々の心の葛藤はやがて “呪い” となり、静かに後の世界へと影響を与えていく。
それこそが富野由悠季が『ガンダム』をはじめとした多くの作品で描き、乗り越えようともがいてきたドラマであると言える。しかも、本作が描いた“呪い”は『機動戦士ガンダムUC』、そして『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の物語へと続いていくことになる……。
『逆襲のシャア』という作品が観る者に伝え遺していくものは、あまりにも深く、そして大きい。

>>>ガンダムならではの濃厚なドラマに酔う『逆襲のシャア』場面カットを見る(写真22点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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