• 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の起点「砕かれた世界」にこぼれた少年少女の希望
  • 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の起点「砕かれた世界」にこぼれた少年少女の希望
2023.10.11

『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の起点「砕かれた世界」にこぼれた少年少女の希望

シン・アスカほか新たな登場人物たちを迎えて紡がれる『SEED DESTINY』の世界 (C)創通・サンライズ


前作では、敵同士になってしまったキラとアスランが憎しみを抱えた戦いを乗り越え、共に世界のために戦う道を選ぶというドラマが描かれたが、二人の間にはあらかじめ、ある種の「相互理解」があったからこそ歩み寄ることができたはずだ。では、その「理解」が及ばない中での歩み寄りは可能なのか? 達観することを拒否して純粋な怒りを抱えた少年――ある意味シンの存在そのものが『SEED DESTINY』のテーマのひとつと言えるのかもしれない。

戦争は何としても避けたい――そんなアスランやカガリたちの思いとは裏腹に、事態は急速に悪化の一途を辿っていく。
コーディネイター殲滅を企むブルーコスモスは、新たな盟主ロード・ジブリールを得て再び勢力を盛り返していき、地球連合軍内に開戦に向けての圧力をかけていく。
さらに、停戦条約締結の地であり、血のバレンタインの悲劇の舞台プラント〈ユニウスセブン〉の残骸が突如軌道を外れ地球へと落下し始めるという事態が勃発。これを引き起こしたのは、血のバレンタインで家族を失い、アスランの父パトリック・ザラの思想に心酔したコーディネイター急進派だった。平和を取り戻した世界の底には、いまだに戦争の火種が静かに燃え続けていたのだ。

ユニウスセブンの事件をきっかけにして地球連合はプラントに宣戦布告。あくまで対話での解決を目指そうとするデュランダルだが、状況はそれを許そうとはしない。
心の傷が癒えないキラは、オーブでマルキオ導師の元へと身を寄せ、ラクスや孤児たちと静かな毎日を過ごしていきたい――そんな彼の小さな願いですら世界の状況は許さない。

そして、カガリが打ち出す理想主義は目の前の状況に成す術もなく、逆に首長の立場として彼女は厳しい決断を迫られていくことになる。

ひとつ、またひとつと潰されていく小さな希望。『砕かれた世界』はそのタイトルどおり、かりそめの平和が少しずつ砕け散っていく様を、甘えを許さない残酷な視点で描いていく。そんな状況の中でキラとアスランが再び戦いの道を選ぶこの『SEED DESTINY』の出発点は、どこか不穏な空気に満たされた現在の世界と共鳴しているような気がしてならない。

>>>キラ・アスラン、そしてシンの新たな戦いが始まる『砕かれた世界』名場面を見る(写真38点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事