• 『閃光のハサウェイ』TVエディションで味わう「ビターな大人のガンダム」
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2023.02.02

『閃光のハサウェイ』TVエディションで味わう「ビターな大人のガンダム」

(C)創通・サンライズ

2023年1月より2021年に劇場公開されて大ヒットを記録した劇場アニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021)が、村瀬修功監督の手によって全4話に再編集されたTVエディションで地上波初登場、現在放送中だ。
新たな形で本作を楽しむ絶好の機会ということで、今回は特に本作で注目してもらいたい様々な視点を提示していきたい。

改めて解説すると『閃光のハサウェイ』という作品は、1988年に公開された『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で描かれた、「シャアの反乱」と呼ばれた第二次ネオ・ジオン抗争から12年後の世界である宇宙世紀0105年を舞台にしており、その物語の背景にはシャアが「隕石落とし」という強攻的な行動を起こした「理由」が大きく関係している。
地球圏からの独立を目指したジオン公国との戦いを皮切りに、何度も発生した宇宙生活者=スペースノイドとの戦いを経てなお、特権階級にあぐらをかいた地球連邦政府の対応は変わることが無かった。そこでシャアは小惑星アクシズを落下させ、地球を居住不可能な状況にすることで、全人類を強制的に宇宙生活者として平等に暮らせる状況を築こうとしたのだ。

「シャアの反乱」が未遂に終わった後の世界を描く『閃光のハサウェイ』では、宇宙世紀の世界観に加えて「兵器」としての側面を強調した骨太でハードなモビルスーツの戦闘描写が大きな見所となっており、そのインパクトが強いためか、ガンダムファン的目線でいえば、初見ではどうしてもそちらに注目してしまいがちである。
だが、その一方で本作は、反地球連邦政府運動「マフティー」を率いるリーダーとして登場する主人公・ハサウェイの心情を丁寧に追いかけている。かつてのホワイトベース艦長ブライト・ノアを父に持つ血筋、シャアから引き継いだ「全ての人類は地球を離れて宇宙に暮らすべき」という思想、そして愛する人=クエス・パラヤを失った苦い経験――『逆襲のシャア』の頃の反抗的な態度や無鉄砲さは消えているが、ケネス・スレッグのような達観した「大人」にもなりきれていないハサウェイは、それらを抱えるがゆえに「自分は今、何かをしなければならない」という使命感と理想に縛られ続けている。

しかし、地球へと向かうシャトル「ハウンゼン356便」に乗っていたハサウェイは、マフティーの名を騙るテロリストによるハイジャックに遭遇。容赦無く乗客の政治家を射殺する彼らの行動を目の当りにしたハサウェイは、ここで高い理想を掲げながらも武力による運動を推し進める自分たちの姿を客観的に見ることになる。
また同機内では、不思議な魅力を持つ少女ギギ・アンダルシアとの出会いがあった。かつて目の前で命を散らせたクエスを想起させる佇まい、そしてマフティー=ハサウェイのやり方を「間違っている」と断罪する態度――まるで自身の心中を見透かすような彼女の言動に、ハサウェイの心は強く揺さぶられる。これまでの選択は正しかったのか? これからの選択はどうなのか? 沈黙の中、ハサウェイは自身に問い直し続けることになる。


(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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