★新たなキャラクター像★
ーーそうして生まれた今作『TRIGUN STAMPEDE』で描かれるナイヴズ、今言える範囲で結構ですのでどんなキャラクターとして登場するのか教えてください。
池田 冷酷で残忍で、人類を憎んでいますが……下手したらいちばん人間らしい人間なんじゃないかなという気がします。
松岡 確かに……。
池田 実は、いちばん思考の整合性がとれている。むしろヴァッシュのほうが異端なんじゃないかなとも思いますね。
松岡 幼少のエピソードを観たら、ナイヴズみたいになっちゃうのも仕方ないと思います。
池田 そりゃあそうなるよね、と。そういう意味では、自分としてはストレートに演じられたかなと思っています。『TRIGUN STAMPEDE』の独自さを感じる部分は、ナイヴズの攻撃性がすべてヴァッシュに帰結していると感じることですね。むちゃくちゃブラコンで、弟が大好きなんだなって。
そのためだけに人間を憎む……という部分がわかりやすくもあり、だからこそ逆に複雑でもあり。「滅ぼしてやる」と「弟大好き」をしっかり結びつけて、その感情を理解して芝居をしないと崩壊しちゃうなと思って、そこは難しいと感じた部分ですね。
松岡 確かに、池田さんのナイヴズは “愛” を感じるんです。
池田 （笑）。
松岡 だから僕もヴァッシュとしてナイヴズとの掛け合いのシーンなどで、「何でこんなに酷いことをしたの!?」というシーンは強くいけるのですが、他の場面では強くいけないんです。できればこちら側に来てほしいという気持ちもあって、でも、お兄ちゃんちょっと酷すぎるし……「ああ、お兄ちゃん！」みたいな（笑）。
池田 二人とも頑固だから（笑）。もうちょっと折り合いをつければいいのに。
松岡 ちゃんと話し合って！ 力づくじゃなくて！（笑）
ーー（笑）。やはり、二人の軋轢や葛藤が物語の核になりそうですね。では松岡さんは、今作のヴァッシュをどう捉えて演じていますか。
松岡 僕自身は「この男は何なんだ？」と感じていただければ正解かなって思っています。ヴァッシュが内心に抱えているのはナイヴズへの気持ちであったり、「人を助けたい」という思いであったり、基本的には当たり前のことばかりです。でも、端から見ると何となく危なっかしく見えたり、「こいつは何か抱えているな」「これって空元気なんじゃないか？」と感じたりする。その部分を強く表面に出したいと思っています。ヒューマノイドタイフーンなんて呼ばれてもいますし……まあ、あれはヴァッシュの責任ではないですけど（笑）。
池田 誰のせいだったかなぁ……（笑）。僕は、松岡さんのヴァッシュはストレートで “もっとも純粋なヴァッシュ” かもしれないなと思いました。原作のヴァッシュも前作のアニメのヴァッシュも、わりと上手く繕うことができる人、大人であろうとするのが上手な人だった気がします。松岡さんのヴァッシュからは、そこがあまり上手じゃないという印象を受けて……そこが素敵（笑）。
松岡 （笑）。
ーーヴァッシュは表面的には陽気でお人好しですが、実は暗い過去や重い信念を隠しているという複雑な男です。今回はそれを「隠しきれていない」ところが特徴。
池田 滲み出ていますよ、ずっと（笑）。それはもちろん芝居の上手、下手とかそういうことではないんです。ヴァッシュというキャラクターが自分の本心を隠していることは変わらない。ただ松岡さんは今回、“そこが隠し切れていない”という演じ方をしていて、それがとても魅力的なんです。
松岡 そう思っていただけるなら、思うツボですよ。完成した第１話を観させていただいたのですが、笑っている時も「こいつ、裏があるんじゃないか？」って気配があるんですよ。自分でも「……想像通り」って思いました（笑）。
ーーひと味違うヴァッシュが見られそうですね。
松岡 それを受け入れていただけたら幸いです。もちろん僕自身、原作やアニメ前作が大好きですし、アニメ前作でヴァッシュを演じられた小野坂昌也さんをどうしても意識せざるを得ない部分もあります。でも、今回はまた新たにスタートする『TRIGUN』です。小野坂さんのヴァッシュも松岡のヴァッシュも、どちらもヴァッシュだと信じて、僕なりのヴァッシュをぶつけています。
（C）2023 内藤泰弘・少年画報社／「TRIGUN STAMPEDE」製作委員会
アニメージュプラス編集部
