• 響きあう心と音色 劇場版 DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-
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2022.02.10

響きあう心と音色 劇場版 DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-

(C)Rayark Inc./「DEEMO THE MOVIE」製作委員会




少女の過去と、現在  松下周平[監督]

ーー本作に携わることになった経緯を教えてください。

松下 『ブブキ・ブランキ』という作品の演出を担当していた時に、小松田大全監督に本作の制作をしているSIGNAL.MDを紹介してもらいました。その経緯もあって、2018年くらいに本作に参加しました。

ーー本作で描かなくてはいけないと思われたのはどんなところでしょうか?

松下 最初から原作ゲームのイメージは大事にしようと考えていました。本作では過去の主人公パートと成長した主人公パートが織り交ざる2部構成になっています。原作はとてもかわいいイラストとともに、セリフがないサイレントな状態でストーリーが進むのですが、終盤ではけっこう悲しい話もあります。なぜ劇場版で成長した主人公を出したのかというと、その悲しい話の先がないと「辛いまま終わってしまう」と感じてしまって。そこで、彼女の人生の先を描きたいなと思いました。悲しいことがあっても、時間はかかるけど前に進んでいく。そういったテーマを盛り込んで今の形をしていきました。

ーー原作ゲームを最初にプレイした際の感想は?

松下 優しい物語だなと。ゲームは時間をかけてプレイして、さまざまなキャラクターと接しながら、彼らの気持ちを長い時間をかけて徐々に心にしみこませていくのですが、映画だとそうはいかないので構成を非常に悩みました。映画でも、ゲームと同じように主人公の成長を体感できたらいいんですけどね。

ーー具体的にはどのような構成を心がけましたか?

松下 劇場版の作中で、成長したアリスは何か呪いをかけられているように見えます。思い出したいけれど思い出せないフレーズが頭にこびりついている。そんな状況です。でも、時間が経つとともに、友だちができたり、ごく普通の経験が積み重なっていって、一歩前に歩んでいくことができるようになる。今思えば、そういったことを描きたかったのかな。
―作中では梶浦由記さんによる主題歌のフレーズが、とても印象的に使われていますね。
松下 初期の頃から、主題曲を全体の核としていく構想をしていました。梶浦さんには映画のコンセプトをお伝えして、お任せしたのですが、最初に曲が送られてきたのを聴いて、「これは、ハマるな」と(笑)。耳に残るフレーズが繰り返される曲構成で、それが心に刻まれていく。Hinanoさんの素晴らしい歌声も含め、手ごたえのある映像に仕上がりました。

ーー松下監督はこれまで音楽をテーマとした作品や、OP・EDも数多く手掛けられていますが、本作において音楽と映像を融合させる際に腐心したことは?

松下 本作のちょっと特殊なポイントとしては、音楽がBGMみたいに聴こえないよう心がけました。映像も大事なのですが、音楽がその手前に印象的に出てくるように意識しました。大事なところでは、あえて映像を抑えめにしたり、効果音を控えたり。また、本作ではEDが大きなピークだと思っていて。フィナーレに向けて映像や音楽が加速していくよう構成していきました。

ーー演奏シーンを描くにあたり、こだわったところはありますか?

松下 ピアノの演奏は、実際の作曲者さんなどに実演してもらい、それをモーションキャプチャーしました。ただ、シーンごとに効果的に見えるようにCG演出を加えています。演奏するDeemoは指が長く、手の位置や座る位置の調整など苦労しました。

ーー本作ではオリジナルキャラクターも多数登場しますが、キャラクターの役回りやキャスティングについてはどんな構想があったのですか?

松下 まず「Deemoがしゃべれないことをどうしようか?」というところからスタートしました。Deemoはしゃべらないですし、難しい演奏シーンが多いし、表情変化もないし。ハードルが高かったです(笑)。なので、本作ではオリジナルのキャラクターを作って、Deemoのそういった部分を補完してもらいました。そして、主人公の成長したパートでは、友だちになるキャラクターが欲しかったので、タイプの違う二人の女の子に登場してもらいました。キャスティングについては、過去のパートが夢の世界のような話なので、逆にちょっと生々しさが欲しくて個性派の俳優の皆さんに声をお願いし、対比しやすくしました。

ーー最後にファンへのメッセージをお願いします。

松下 原作のファンも、原作を知らない方も、楽しめる作品になったと思います。音楽が本当に素敵なので、ぜひライブに行くような気持ちで映画館に足を運んでいただけたらうれしいです。

いつもそばにいるピアノと歌  梶浦由記[主題歌制作]

ーー本作の印象と、主題歌「nocturne」について教えてください。

梶浦 しんみりと心を打つ物語だと思いました。人が人を想い、人の想いが人を支える物語は、やはり胸に響きます。救済のストーリーでもありますが基本的には闇の物語で、非常にパーソナルな心の話でもあって閉ざされた闇の色彩の悲しさと美しさと、そして大仰になりすぎない開放感。そして、個人の視点を忘れないイメージで楽曲にしたいと思って臨みました。

ーー『DEEMO』の世界観を表現するにあたって、意識したことは?

梶浦 物語の持つ色彩感や湿り気、世界観を理解したく何度も脚本を読み、ゲームの世界も楽しんでみました。もともと素晴らしい音楽に溢れた作品ですから、新たに書かせていただく曲はその音楽の全体イメージに寄り添い、最後をそっと見送るような曲がいいなと。

ーー劇中ではピアノの音色がカギになりますよね。

梶浦 物語の中で何度か繰り返され、そして最後は歌になる、という前提がありましたので、まず覚えやすいピアノで弾いても歌ってもいいような旋律、導入にしたいと考え作り始めました。歌の印象としては、ピアノと歌が寄り添っては離れ、また寄り添うような……。ささやかでもいつもそばにいるような。そんな構成になるように曲を作っていきました。

ーー完成した映画をご覧になって、いかがでしたか。

梶浦 劇中音楽と映像のマッチングが素晴らしく、音と絵だけで台詞の少ない長尺のシーンにもしっかり魅せられてしまい、本当にあっという間でした……。美しいシーンは本当に何度でも観たいなあと、また上映が始まったら改めて劇場で堪能させていただきたいと思っています。劇場でしか味わえない『DEEMO』の世界がまさにここにあるな、と思って拝見していました。

【予告映像 -♪Dream】劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』【2022年2月25日公開】
本編の冒頭に登場する曲で、原作ゲームでも最初に触れる曲。


(C)Rayark Inc./「DEEMO THE MOVIE」製作委員会

アニメージュプラス編集部