――今回、吉田玲子さんも初参加とのことですが、実際に組んでみていかがでしたか。大森 吉田さんは前からすみっコはご存じで、前作も劇場で観ていらっしゃるし、携帯アプリのゲームも楽しんでらしたそうで、心強かったですね。
――まさに適任ですね(笑)。ということは、吉田さんの中に既にすみっコにこういうことをさせてみたい、みたいなイメージもあったのかもしれませんね。大森 そうですね。デザインチームとも話し合いながら膨らんでいったものが大きいんじゃないでしょうか。
――望むことが何でも叶う魔法使いには夢がない、という設定にはドキリとさせられました。本作の中でも大きな鍵になったのではないでしょうか。大森 そうですね、そこから引き起こされる出来事で改めて夢の意義を知ることになる、というのは吉田さんのアイディアで、これはひとつのトピックになると思いました。
――先ほど、この作品は大きなチャレンジとおっしゃっていましたが、実際に作業に入られてみての苦労は?大森 一番大きいのはやはり、セリフがないというところですね。今まで自分がいかにセリフに依存してキャラクターを動かしていたかということが理解できました。当初なかなか取っ掛かりがつかめなくて苦労したところもあったのですが、逆に体をくっつけたり顔を見合わせるだけで伝わるものがある、ということが分かりました。そういうことを全て演出で利用していこう、と頭を切り替えてからはだいぶ楽になりました。
――とはいえ、キャラクターの演技づけなども大変だったのでは。大森 当初はコンテで描いたポーズが3Dモデルではつけられない、なんていうことも結構ありましたね。でも、スタッフの工夫でデータを上手くいじってもらって、僕の希望通り、もしくは希望以上に動かしてもらえたと思います。
――3Dモデルならではの悩みですね。大森 もっと自由に動かせるんじゃないか、と思ったんですが、いざやってみると手足や口も結局人間の手で、良い感じの形になるように動かしていくんですよ。そういう部分は手描きのアニメと変わらないんですね。今回はちょっとした細かい描写もすみっコたちの世界観に寄せたいという希望がありまして、例えば光の表現も実写的なものではなく、漫画のような表現で良いと。その統一を図ると、そちらでも手描きの作業が増えてしまって、結構大変でした。
▲スタッフの苦労が生んだ、優しくて温かい、すみっコの世界観。
――その作業で特に大変だったものは?大森 今回、回想や夢を表現するために吹き出しを多用したんですが、その形や散り方には苦労しました。
――ナレーションで進めていく物語なので、言葉の選び方も慎重に取り組まれた感じでしょうか。大森 前作のベースもありましたので、そこは大丈夫でした。今回はすみっコには井ノ原(快彦)さん、魔法使いには本上(まなみ)さんと、キャラクターに寄り添うナレーションの棲み分けを行っていて、なるべく彼らの気持ちを代弁するのはやめよう、画面で起こっていることからそれを想像させるようにしよう、ということは意識しました。
――誘導するのではなく、ニュアンスをくみ取ってもらうということですね。さて、前作と違って本作はコロナ禍の中で制作されることになった訳ですが、監督の中でそういう状況を意識して制作された部分はあったのでしょうか。大森 あまりコロナだからこれを表現したい、と言うような押しつけがましくはしたくありませんが……実際に動くことができなかったり、会いたい人に会えないと言う事を、誰もが実感して来た事と思います。自制せざるを得なかったそれらの気持ちを失わずに日々の生活を送る、ということをキチンと届けたいという思いは、制作する中で膨らんでいきましたね。
――では最後に、子どもたちは勿論なんですが、大人のファンも楽しみにしている作品だと思います。ファンに注目してもらいたいポイントなどはありますでしょうか。大森 すみっコたちの物語は、自分と重ねられる部分が多いと思います。叶う叶わないはともかくとして、夢を持っていればそれは自分を支えるためのものになるんだよ、と。そんなことに共感を感じて観て頂けると嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。
>>>すみっコたちが可愛い魔法使いに! 『青い月夜のまほうのコ』場面カットを見る(写真10点)(C)2021 日本すみっコぐらし協会映画部