――そもそも、木村さんがラップを好きになったきっかけは何だったのでしょうか?木村 僕は1997年にドイツから日本に引っ越してきたんですが、その時に飛行場でマルク(当時のドイツ通貨)を使い切りたいということで、母からCDを買ってもらったんです。それが、『97』という、その年のコンビネーションアルバムのようなもので。音楽家の母が、今年は家族にとって大事な年になるからという理由で買ったCDだったのですが、M.C.ハマーやバックストリート・ボーイズらの曲が収録されていて、世の中にはこんな音楽があるんだと衝撃を受けたんです。それで、日本に越してきてからは、近所にシングル10円、アルバム50円という感じでレンタルアップCDを売っているお店があったので、みんなが駄菓子を買っている間に僕はCDを買っていました(笑)。そこで小3ながらジャケ買いしていたCDがことごとくラップミュージックで! そこからラップミュージックに興味が湧いた気がします。なんかハマっちゃたんですよね。
――色々な音楽がある中、木村さんがラップミュージックに心惹かれる理由は何でしょうか?
木村 ラップミュージックの反骨精神みたいなものが共感できたというところと、歴史の成り立ちも素晴らしいなと思えたり、単純に見えて、すごく複雑なことをやっているように思えたからですかね。何がカッコいいかなんてよく分からないんです。理屈じゃない、全部がカッコいいんですよね(笑)。うん。
――今回、子供向けアニメにラップやスヌープ・ドッグが登場されたことについてはどう思われますか?
木村 今回のように、アニメでラップが扱われるようになったことが凄く素敵なことだなと思っています。今でこそ大人たちがやる音楽になったけど、ラップミュージックって元々は10代の若者、子供たちがやっていた音楽ですからね。ラップは、黒人差別が色濃くある1970年代のアメリカ・NYで、ろくに学校も行けず、仕事も無くて、奪ったり人を傷つけることでしか生きていけなかった子供たちが、暴力ではなく、ラップのスキルで優劣を付けようという中で生まれた音楽なんです。だから、子供とラップは通ずるものがあるのかなって思っていて。子供の有り余ったエネルギーを向けたことで発展してきたカルチャーですから。それに、ラップは時代が進むにつれて扱うテーマも変わってきていて、令和の今なら、子供の遊び道具としても楽しめるんじゃないかな。言葉遊びを通して感性を磨くこともできますし、友達とラップバトルで通じ合うこともできるので。是非子供たちにこそラップを楽しんでほしいなって思います。
――『ルーニー・テューンズ』の世界観で表現されると、ラップもより身近に感じられそうですよね。木村 アニメーションにラップが登場する時って、ラップをすること自体がギャグとして捉えられていることが多いのですが、今作はスヌープ・ドッグを出すというところでも、本気さが窺えるというか……。気合入っているなと。ただ、個人的な意見なのですが、願わくば今後ラップが登場する際は、僕にラップ部分を書かせてほしいなと思いました(笑)。英語を日本語に変える時に、口の動きに日本語を合わせなくてはならないので、ボキャブラリーがぐっと狭まるんですよね。そこが翻訳家さんたちも苦労されるのかなと思ったので、僕がラップとしても成立するし、口にも合うラップを書きたい。挑戦してみたいです。
――よりブラッシュアップできそうな?木村 そうですね。声優としての立場でラップをできるので、一度監修してみたいですね。龍田さんにラップをお教えしてみたいです(笑)。そんなことを思うくらい、可能性や楽しさを覚えました。
――実現したらより本格的なラップになりそうです。もし、木村さんが『ルーニー・テューンズ』の仲間としてあの世界に入るならどんな形で入りたいですか?木村 うーん……。本人役だったら激アツですかね。木村昴役で出て、バックスに「やぁ!昴」って言われたいですね。もしくは空き地のガキ大将役で。みんなで空き地で野球するエピソードとかないんですかね(笑)。
――それは是非観てみたいです(笑)。最後に、作品を楽しみに待っている方に向けてメッセージをお願いします。木村 めっちゃポップでコミカルで、観ていて楽しい物語になっていると思います。これまでの『ルーニー・テューンズ』ももちろん楽しいのですが、スヌープ・ドッグが登場する今回は、ご機嫌度合いが特別マシマシかなと思いますので、楽しんで観ていただけると嬉しいです。物語もストーリー展開は王道なんですが、それを現代的にポップにコミカルに作ってあって、楽しんでいただけること間違いなしです。願わくば、クラスの友達、会社の同僚、親族、近所の人、回覧板も含め、お薦めだよと広めてもらえたら嬉しいです!
木村さんがスヌープ・ドッグ役で出演する、日本初放送のエピソード「ラップバトル前編/ラップバトル後編」<原題:Hip Hop Hare Pt 1 / Hip Hop Hare Pt 2 >を含むアニメ『カートゥーンスペシャル 新 ルーニー・テューンズ』は、アニメ専門チャンネル「カートゥーン ネットワーク」にて2021年6月27日(日)14時から放送予定。同番組内では、スヌープ・ドッグの日本語吹替を務め、ラッパーとしても活躍している木村昴さんが、オリジナルラップを披露する特別映像「木村昴の明日から使えるラップ講座」もカートゥーン ネットワーク限定で放送する。放送を記念して、木村さんのサイン色紙が抽選で当たるプレゼントキャンペーンをカートゥーン ネットワーク公式サイトで実施中。応募締め切りは、2021年6月30日(水)まで。