――それは楽しみです。今回の『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』は他の作品に比べても空戦シーンが非常に多いですが、この作品ならではの難しさというのはありましたか?
野中 空を飛ぶ際の浮遊感というか、重力がかかる感じの再現が難しかったですね。
――離陸前は椅子が後ろにグッと倒れて、飛び立った瞬間に少し前のめりに下がるところなど凄くリアリティーがあって
Gと浮遊感を感じました!
野中 そこは結構大変で、何度も調整したところなので嬉しいです。
吉田 『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』は他の作品と比べると、パイロットが操縦席から見ているシーンが多かったので、そのへんは効果を付けやすかったです。映像と
4Dの親和性が高いと言いますか。僕たちは遊園地の
VRにモーションを付ける仕事もしているのですが、今回は映画に付けるというよりは、
VRのアトラクションに付ける感覚でできましたね。
――比較的やりやすかったということですか?
吉田 そうですね。でも大変なところもたくさんあって……。基本的には飛行機の傾きに合わせて椅子の上げ下げをするのですが、たまに操縦席目線から急にその飛行機を対面で撮っているカットに切り替わるんです。そうなると傾きが逆になるんですよ。そこを違和感がないよう前後の辻褄を合わせるのが難しかったですね。
――実際どうしたんですか?
吉田 うーん。時々によりますね。その次のカットまで考えて、前後の繋がりがちぐはぐにならないように臨機応変に対応したのですが、一体感を出すのに苦労しました。
條々 そのへんは彼らのノウハウですね。お客さんが違和感を持つことが一番問題なので、違和感を持たせないように、彼らは同じシーンを何十回と見て、最適な効果を付けるんです。
1本の映画を一体何回見てるの?
吉田 いや、分からないです(笑)。でも同じ3秒間を
10回以上繰り返して見たりしてますね。
1回の旋回の動きを何度もリピートして、実際に椅子に座りながら細かく動きを付けています。
――微調整を繰り返して進んでいくのですね。ちなみに、戦闘機の揺れや振動は、戦闘機ごとに変えたりしているのですか?
▲イサオの乗る震電野中 今回、戦闘機ごとに揺れは変えています。特に顕著に揺れが変わっていると分かるのはイサオの乗っている震電かな?
吉田 イサオの乗っている震電はちょっと異質というか。その他大勢はあまり分かりやすく区別を付けていないのですが、震電だけは気持ち悪い動きを付けました。
――気持ち悪いと言いますと?
吉田 「物理的にそうはならんやろ」という動きを付けました。震電が物理法則的ではない動きを映像でしているので、それに合わせる形で。震電以外の他の飛行機は結構自然に飛んでいるんですが、震電だけは無理やり飛ばしているようなイメージなんです。実際にはあり得ない動きをするので、あえてその異質さが際立つように動きを付けましたね。
――確かにうねうね動くというか震電は不思議な感じでした。
4Dの効果の一つに匂いもありますが、今回はどんな匂いが付く予定ですか?
野中 最終チェックがまだなので決定ではないのですが、(キリエの大好物の)パンケーキのシーンでは甘い匂いを付けています。
▲キリエの大好物パンケーキ。MX4D版では甘い匂いが付く予定
――やっぱりそこは外せなかったんですね。他にもありますか?
野中 今考えているのはエンジンの匂いを考えています。オイルっぽい匂いというか……。
吉田 発進する前とか墜落した後とかにエンジンの匂いを付けようかと思っていますが、まだ決定ではないので、
(仮
)という感じです。
――そもそも、その匂いというのはどうやって決めているんでしょうか?
吉田 基本的に監督さん達が決定します。匂い決める時は結構盛り上がりますよー。匂いを色々嗅いでいただいて決めるんですが、どの匂いにするか楽しそうに決めています。
條々 女性を象徴したシーンには、イメージの良い匂いを付けたりすることもしますね。
――今回はキリエ達に匂いが付くことはない?
吉田 今のところ予定はないですね。
條々 際限なく匂いを付けられる訳ではないので……。だからこそどんな匂いを付けるかを真剣に話し合っていますね。
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C)「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」製作委員会