『おそ松さん』監督が『若おかみは小学生！』を語る！

ロッテンマイヤーさんシバきたい

——ツイッターでつぶやいていましたよね。『若おかみは小学生！』を観て、おもしろかったって。そもそも、どうして『若おかみ』を観に行こうと思ったんですか？

藤田　アニメ業界に全然関係ない飲み友達とかが、異様にハマってたからって感じです。普段、ニチアサばっかり観ているような連中が、ニチアサのノリで観に行ったらくそハマりしてしまって、一時期「ジンカンバンジージャンプ！」としかツイッターでもつぶやかなくなったりして（笑）。それで観に行ってみました。

——藤田さん的には『若おかみ』、どこがよかったですか？

藤田　めちゃめちゃ月並みな感想になっちゃいますが……年を取ると、こういう話がアリになってくるんですかね。ガキの頃は『おしん』もうそうだし『小公女セーラ』とかもそうでしたけど、ああいう話がすげえ苦手で。

ーーああ、『細腕繁盛記』的な、女の子が苦労しつつ成長するような物語。

藤田　そんなに辛いことばっかり起こらなくてもいいやん！　と。『アルプスの少女ハイジ』を観ていても、ロッテンマイヤーさんとか、後ろからシバいちゃえばいいのにって思うじゃないですか（笑）。

ーーははは（笑）。

藤田　でも『若おかみ』は、最後に出てくるキャラクターも「悪人」じゃないじゃないですか。そこがいいところなのかな、と。昭和のノリだと、もうちょっとわかりやすい壁になる「悪人」ぽい人が出てきそうだけど。最初から「相手は相手で人生があって、悪気はなくて……」という描かれ方でそういうところは今っぽいというか、引っかからずにノっていけるバランス感覚になっていますね。

——言われてみれば、おっこちゃんが若おかみとして奮闘する姿は、それほど辛そうには描写されないですね。もちろん、最初に両親と死別するというヘビー級パンチをくらってはいますが。

藤田　そこがまた、最後に効くんだろうなっていう気もしますけどね。

ーー明るく健気に頑張るおっこちゃんが、実はやっぱり辛かった……と後からわかる演出になっているから泣けるっていうのもありますね。でも確かに、昔だと「辛い目に遭う話」の主人公って、何と言うか、もっとイジめられていた気がします。

藤田　そう、「なんて人でなしな！」と思うような仕打ちを受けていた。

ーー『けろっこデメタン』とか『みつばちハッチ』とか、ああいうイジめられる系の話、個人的に子供の頃は怖くて観られなかったです。

藤田　ははは（笑）。イジめ方がエグいっすよね。『ダメおやじ』とかもキツかったですよ。容赦なくて全然笑えなかった。逆に言うと昔の人はみんな、そのくらいの理不尽を普通に食らって生きてきたってことなのかもなって、思ったりしますね。作り手の経験が反映されているのかなって。

ーー実際、作中で登場人物に辛い思いをさせる時って、気を遣いますか？

藤田　気は遣いますね。結局、今はわかりやすく純粋な悪人が出せないってことですかね。マンガとかもだいたいそうですけど、悪人にも事情があって、動機がわからないと動かしにくいというか。敵役も何かしら理由のある人間か、完全なサイコパスかの二極になって。昔ほどシンプルな「悪」のキャラクターっていうのは、なかなか出しにくいですよね。みんな、現代なりの悪を試行錯誤して描こうとしているんでしょうけれど、そこを掘ったとしてエンタメとしてのカタルシスに届くかどうかはまた別問題だったりするし。多様な価値観みたいなことも言われている世の中なので、敵役は難しいです。