TVアニメ『BEM』のOPテーマ「宇宙の記憶」を、30 枚目のシングルとしてリリースする坂本真綾。今作の注目点はなんと言っても作詞・作曲・編曲を椎名林檎が手がけたこと。坂本真綾×椎名林檎という同世代の強力コラボは、いかに実現したのか?
ーー 新曲「宇宙の記憶」は、椎名林檎さんのプロデュースです。コラボはどのようにして実現したのでしょうか?
坂本 デビュー当時から異彩を放っていた方で、同年代のシンガーソングライターとして刺激を受けていました。仕事でもご一緒できたらいいなという想いがずっとあり、『BEM』のOPを担当させていただくことになって、この作品には林檎さんの世界観が合うだろうなと思いました。そこで「今だ」という気持ちでお願いしたら、快諾していただけました。
ーー 『BEM』と椎名林檎さんの世界観が合うと思った理由を教えてください。
坂本 オリジナルの『妖怪人間ベム』を受け継ぎつつ、舞台がニューヨークをモデルにした街になっており、大人っぽくてお洒落なアニメを目指すという制作意図をうかがったのと、BGMにジャズバンドのSOIL & "PIMP" SESSIONSが参加していることです。SOILは林檎さんとつながりが深く、何曲も一緒に作品を作られていますし、林檎さんの曲と『BEM』のスタイリッシュな世界観の親和性も高いと思いました。
ーー 「宇宙の記憶」を聴いて、第一印象はいかがでしたか?
坂本 痺れました。人間の愚かな部分や正義が報われない理不尽さをテーマにした『BEM』の世界観を、宇宙にいる女神の視点で表現した曲で、特に歌詞は、私には絶対に書けないと思いました。耳で聴くとジャズのメロディに合ったリズムを生み出していて、目で読むとものすごい哲学的なことを表現しているんです。最初は、自分で歌うのは難しいかもと一瞬、思ったのですが、不思議なことに口に出してみると快感に変わって、独特な歌い心地でした。
ーー レコーディングには、椎名林檎さんも立ち会われたのですか?
坂本 はい。歌録りだけでなく制作の工程すべてを、林檎さんがプロデュースしてくださいました。
ーー スタジオではどんなやり取りがあったのでしょう?
坂本 いくつかディレクションしていただいた中で印象に残っているのは、大サビの部分です。私は歌い上げるイメージだったのですが、ここは抑えてウィスパーで歌ってほしいと言われて、たしかにそのほうが合っていると思いました。それから、こんなディレクションは初めてと思ったのが、間奏部分ですね。「ここに女王様のうめきをください」っておっしゃったんです。女王様になって人間の愚かな行いを見下し、ため息をついたり苦笑したりしている声をアドリブで入れてほしいと。最終的には「うめき」というよりは、人間に呆れたり、逆に愛おしさを感じたりしている「吐息」みたいな声になりました。
ーー SOIL & "PIMP" SESSIONSも演奏に参加しています。
坂本 オケ録りを見ていて、メンバーのみなさんの林檎さんへのリスペクトを感じました。林檎さんも「素敵、素敵」と言いながらディレクョンされていて、かっこいい曲に仕上がったと思います。
ーー この曲にどんなOP映像がつくのか、『BEM』の放送が楽しみです。坂本さんは、声優として出演もされてますね。
坂本 「謎の女」という役です。物語のクライマックスまで正体が明かされないので、ぜひ最後までご覧になってください。
宇宙の記憶
FlyingDog
1400円
7月24日発売
※坂本真綾の作詞作曲による「序曲」と、the band apartのカバー「明日を知らない」の2曲をカップリング。
執筆/鈴木隆詩
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