• 『クラユカバ』『クラメルカガリ』塚原監督が語るノスタルジックな幻想世界
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2024.04.19

『クラユカバ』『クラメルカガリ』塚原監督が語るノスタルジックな幻想世界

(C)塚原重義/クラガリ映畫教會

レトロフューチャー、SF、スチームパンク、猟奇、幻想……さまざまな言葉で表現することができて、しかしそのどれとも少しずつ異なる、そのすべての要素を兼ね備えながら全体としては圧倒的に唯一無二の世界観が、ここにはある――。
個性的な作品で注目を集めていたアニメーション作家・塚原重義が満を持して放つ長編アニメーション作品が4月12日(金)より、何と2作同時に公開となった。
『クラユカバ』と『クラメルカガリ』は共通の世界観を背景としながら異なるテイストの物語と映像世界を展開する、それぞれに独立した長編アニメーション映画。いずれも塚原監督の世界の深さや広さを証明すると同時に、エンタテインメントとしてストレートに楽しめる必見の作品となっている。
今後、大きな話題となるであろうこの2作品について、塚原監督に話を聞いた。

◆下町とレトロ感への親しみ◆

――『クラメルカガリ』と『クラユカバ』は、塚原監督が構築した共通の世界を舞台としています。塚原監督が以前から短編作品などを通じて展開してきたこの世界観は、どこにルーツがあるのでしょうか。

塚原 何かはっきり「これ」というベースがあるわけではないのですが……自分で想像するに、ひとつは自分が生まれ育ったのが東京の下町だということ。谷中、根津、千駄木、いわゆる「谷根千」と呼ばれて、戦前からの古い建物が多く残っている地域なんです。それに加えて父の影響で、昭和30年代とかの古い邦画を観るのも好きでした。子どもの頃からレトロ調のものへの心の距離が近かったというのは多分大きいかなと思います。
 あと、小さい頃から遊んでいた公園が「神明都電車庫跡公園」という名前で、路面電車(東京都電)の車庫跡を公園にした場所だったんです。公園の隅に古い都電が飾ってあったりして、古いメカニックへの興味はそのへんがルーツなのかなという気がします。「昔、この場所はこんな風になっていたんだよ」という話を周りの大人から聞く機会も多かったし、そこから過去の風景を想像することは小さい頃から、それこそ幼稚園の頃から自然にしていました。そのあたりも結構、ルーツなのかなと思ったりしています。

――今回の2本では、まず『クラユカバ』が先に動き出したそうですね。

塚原 そもそもは、2012年に自主制作した「端ノ向フ」という作品を作り終わった後に、今度はこのテイストでもっとエンタメ性が高くて尺も長いものを作りたいと思ったのが出発点です。「端ノ向フ」はそれ以前の自主制作の総決算という思いで、その時点でできうるかぎり濃いものができたと当時は感じていました。だから、今度は商業作品としてエンタメ性の高いものを作りたいと思った、というのが『クラユカバ』のスタートです。
 ただ、そこからなかなか企画がうまくまとまらずに、最終的に2018年末にクラウドファンディングを実施して、ようやく制作に入ることができました。結果として、その長い「準備期間」に鬱屈していた自分のドロドロが『クラユカバ』には込められて、私小説的な内容になっているかもしれません。一方『クラメルカガリ』は、『クラユカバ』で一旦“ドロドロ”を吐き出すことができたおかげで、まっさらな状態で作れたので。より純粋にエンタテインメントメが作れたかなと思います。

――確かに『クラユカバ』のほうが「塚原監督の世界」という感覚が強く、『クラメルカガリ』はもう少し一般のアニメ寄りという印象を受けました。

塚原 それはよく言われます(笑)意識的に作り分けたつもりはないですが、結果的には2本それぞれカラーの違いがあって良い感じにできたなと思います。



※塚原監督の「塚」は正しくは旧字体です

アニメージュプラス編集部

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